「サイキに寄せるオード」に見るキーツの宗教観と神話的表象

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  • 高野, 吉一
    京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Psyche re-mythologized : Keats' religious attitude in 'Ode to Psyche'
  • 「 サイキ ニ ヨセル オード 」 ニ ミル キーツ ノ シュウキョウカン ト シンワテキ ヒョウショウ

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抄録

英国ロマン派詩人ジョン・キーツの'Ode to Psyche'は絶唱とされる彼のオード群の中でも, 比較的論じられることの少ない作品であったが, 近年, 新歴史主義やジェンダー批評の広まりによって, この作品の新たな側面に光が当てられるようになった. 中でも, 当時広まりを見せていた懐疑主義にキーツが強い影響を受け, 'Nativity Ode'においてジョン・ミルトンが歌い上げたキリスト教による異教排斥に反発するため, ギリシャ神話的要素の濃い'Ode to Psyche'が書かれたのだという見解が提示され, その見方が後の解釈に大きな影響を与えている. しかしながら, 彼の手紙やこの作品から直義見出されるキーツの宗教的態度は, 反キリスト教精神とは凡そ異なっているこの論文では手紙に見られる詩人の宗教に関する雷及を参照しながら, 'Ode to Psyche'に表れたキーツの宗教観について再考するとともに, このオードに込められた自らの生きる時代への皮肉を明らかにすることで, この詩に描き出された魂と愛の神話的表象について考察する. それにより, 詩人は懐疑主義的な時代思想にさらされながらも, 決して損なわれることのなかった純真な魂が, 官能的な愛から昇華された慈愛によって受け入れられる様を, ギリシャ神話的な手法である擬人化と, キリスト教的アレゴリーを融和させる形で, 魂と愛の婚礼の物語として再神話化したことを明らかにする.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 21 205-216, 2012-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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