若いメタセコイア林分の物質生産量について

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タイトル別名
  • Productivity of Young Stands of Metasequoia glyptostroboides
  • ワカイ メタセコイアリン ブン ノ ブッシツ セイサンリョウ ニ ツイテ

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抄録

1. 日本には落葉針葉樹はカラマツ1種しか分布せず, 森林のタイプごとに生産力等を比較検討するのに, 他の落葉針葉樹林の生産力などを知る必要があった。2. 若いがよく閉鎖したメタセコイアの林分が, 山口県の旧京大徳山試験地にあったので伐倒調査した。林分1と2とも樹令9年生で, 近接していて立地条件はほぼ同じである。林分1は立木本数約6, 200本/ha, 平均樹高8. 9m, 林分2は立木本数約12, 900本/ha, 平均樹高8. 0mである。林分1は個体差が大きいが, 林分2の個体は非常によくそろっていて, 共倒れ型に近い林分である。胸高断面積合計は両林分とも24m_2/ha前後である。3. 調査方法は17本の伐倒木 (林分1は10本, 林分2は7本で全伐調査) を, 1m巾の層別刈取法で調べた。調査は1967年9月上旬に行った。4. 林分の現存量および生長量は, 次の各器官の間に成立する相対生長関係と毎木調査結果とから推定した。幹量 V_s=0, 05957・(D_2H)_0. 948 V_s=0. 0031・W_s 枝量 W_B=0. 01611・W_s_1. 27 葉量 W_L =0. 127・W_s 根量 W_B=0. 22・W_s 幹生長量 ⊿W_s=0. 02598・W_s_1. 23 枝生長量 ⊿W_B=0. 9450・W_B_0. 915 V_s ; 幹材積dm_3, D_2H ; (DBH) 2×(樹高) cm_2・m, W_s ; 幹乾重g, W_B ; 枝乾重g, W_L ; 葉乾重g, W_R ; 根乾重g, ⊿W_s ; 幹重量生長量g, ⊿W_B ; 枝重量生長量 5. 林分現存量および生長量の計算結果は表1に示した。6. 幹量を林分樹高, 立木本数のほぼ等しいカラマツ林分と比べるとほぼ同じであった。しかしこのメタセコイア林分は伸長生長が年平均1. 2mと大きいので同じ幹量を蓄積するにも短期間で達成する。林分葉量は5ton/ha (短枝を除くと4ton/ha) と, 同じ落葉針葉樹のカラマツ林の葉量とほぼ等しい (表2)。林分1の枝生長量は3. 8ton/ha・yr (9. 9m_3/ha・yr) で, 林分枝量 (7・5ton/ha) の50%に相当する。また幹生長量の46%にあたる 7. 幹の生長量は大きな個体ほど大きく, 単位葉量の生産する幹量 (⊿W_s/W_L) は優勢木で1. 7 - 2. 3kg/kg, 被圧木で1. 1 - 1. 2kg/kgと2倍以上のひらきがある。8. 林分1の純生産量 (⊿P_n) を次の式から推定した (表3)。⊿P_n=Y_2N+⊿L_N+⊿G_N Y_2N ; 調査時における当年生長部分 (新部分) の現存量 ⊿L_N ; 新部分の枯死量 ⊿G_N ; 新部分の被食消失量 各項目は主に表1の数値を代入した。樹皮のY_2Nは, 現在の皮量に1年間の幹表面積の増加率を乗じて推定した。葉の⊿L_Nには他のデータからの推測値を用いた。⊿G_Nは全項目を0とした。9. 純生産量は21ton/ha・yrとなった。カラマツ林分と比較すると, 最も多い部類に入るが, 林分の若さ, 立木本数を考慮してみると同程度の生産力と考えてよかろう。10. この林分の乾物量62. 0ton/haで, 養分量はそれぞれチッ素279. 6kg/ha, リン42. 2kg/ha, カリウム187. 1kg/ha, カルシウム393. 5kg/ha, マグネシウム34. 0kg/haと推定した。

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