モミ属の地理分布に関する研究 : マツ属の種分化に関連して
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- 大畠, 誠一
- 京都大学農学部助教授
書誌事項
- タイトル別名
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- Speciation and Distribution in the Genus Abies with Reference to Speciation of the Genus Pinus
- モミゾク ノ チリ ブンプ ニ カンスル ケンキュウ マツゾク ノ シュ ブン
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説明
マツ属の系統進化上の特徴をより明確にするために, マツ属同様, 北半球に広く分布するモミ属の地理分布を調べ, マツ属の地理分布, 形質の特徴と比較した。なお, モミ属は世界に約40種を擁し, 古第三紀の頃に起源し, 現在, 北半球に繁栄している種群である。検討の結果, 下記の点が明かにされた。1 モミ属は, マツ属に比べると一般に高山の, 冷涼な気候条件下に生育していた。2 モミ属では, 種類群 (節), 種類間でお互いに棲み分ける性質が明かであり, 異所的種分化後の隔離機構の影響が強く残されていた。3 現在繁栄しているモミ属の系統群, 節での分布の様相は, 各節によって様々であり, 現在広分布し, 繁栄している節はすくない。すでに消滅の段階にある節が多数見いだされた。この属内の地理分布の様相はマツ属と同様であり, 各種群の位置づけを表3に示した。4 日浦 (1984) による針葉樹系統発生の地縁展開法則によれば, モミ属, マツ属ともに多型属である。言い換えると, モミ属は典型的な多型属で, 新しい時代に発生して現在繁栄する種群である。他方, マツ属の出現はジュラ紀と古く, 単なる多型属ではない。マツ属は第三紀に一度繁栄し, 現在でも繁栄を続ける特殊な種群であった。5 モミ属種間での球果の形質の違いは小さく, 種分化後の歴史の短さと関連づけられた。他方, マツ属種間での形質変異の大きさは, 起源後の時間の長さと, その間に発生した気候変動に対するマツ属の新しい種分化により, もたらされた結果であると考えられた。
収録刊行物
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- 京都大学農学部演習林報告
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京都大学農学部演習林報告 66 24-36, 1994-11-30
京都大学農学部附属演習林
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050564285753105024
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- NII論文ID
- 120005516247
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- NII書誌ID
- AN00061068
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- ISSN
- 0368511X
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- HANDLE
- 2433/192070
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- NDL書誌ID
- 3603671
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- NDLサーチ
- CiNii Articles