<特集論文 1>序--「壁」はどこにあるのか? -- 戦争・難民・記憶のポリティクスに向けて
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- 伊地知, 紀子
- 大阪市立大学大学院文学研究科
書誌事項
- タイトル別名
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- Foreword : Where are the "walls"? Facing the Politics of War, Refugees, and Memory
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説明
現代世界に巻き起こる戦争、難民、記憶をめぐる諸相について、加害/被害、受入/移住、正史/野史といった二項対立軸で分析論述することには困難がともなう。そもそも、この二項は、戦争が起こされ、難民が生み出され、これらをめぐる記憶が形作られる際に要請されるカテゴリーである。例に挙げた二項は、構造的には前者が優勢であり、後者は劣勢であることはいうまでもない。これら、戦争、難民、記憶は、いずれも大きな課題であり、人類学や社会学において日本語による研究成果も増えてきている。前提として、帝国主義、植民地支配、ポストコロニアリズムをめぐる議論がグローバル化のなかで生まれ、より具体的な様相へと展開してきた潮流があることは論を待たない。「記憶」を例にとっても、1929年のアルヴァックスによる集団的記憶研究が脚光を浴びたのは1980年代である。ホブズボウムやアンダーソンを嚆矢とする「伝統」や「国民国家」への問いが、1990年代新自由主義が席巻する世界のなかでこれらの課題を発見したともいえるだろう。それぞれの課題をめぐり、構造的問題を分析するマクロレベルの研究や、個別の事例に基づくミクロな実証研究に向けて多様なアプローチを設定することは可能である。こうしたなかで、本特集の執筆陣による問いは、これらマクロとミクロの両者をつなぐ社会性や共同性はいかに捉えうるのかというものだ。冒頭で例示した二項に分類される対象の選別基準は時代や社会に拘束されており、いずれの側も正当性を主張しうるものであるが、完全に分離対立しているのではなく折れ目に深浅のあるひだのようでもある。日常の現実では幾重にも織り込まれていき、時間の幅が広くなるにつれ、そのひだすら見いだせなくなりかねない。そこで、こうしたひだをあえて本特集では「壁」とした。「壁」は法制度、知識、社会意識、発話、ふるまい、判断、社会関係などいたるところに立ちはだかる。これらの「壁」は、構造的優勢側によって立てられるほうが劣勢側が立てるよりもはるかにハードである。しかし、前者とて時代や社会の変化に対応せざるをえない局面においては「壁」の質や高さを変更せざるをえない。本特集では、各自のフィールドにおける「壁」をはさんでの折衷、妥協、融合の諸側面に向き合う様を捉えることを狙いとしている。
収録刊行物
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- コンタクト・ゾーン
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コンタクト・ゾーン 9 (2017), 191-197, 2017-12-31
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050564285805428864
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- NII論文ID
- 120006373921
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- NII書誌ID
- AA12260795
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- ISSN
- 21885974
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- HANDLE
- 2433/228320
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles
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