日本における小売業態の変遷と消費社会の変容

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タイトル別名
  • ニホン ニオケル コウリ ギョウタイ ノ ヘンセン ト ショウヒ シャカイ ノ ヘンヨウ
  • Nihon niokeru kouri gyotai no hensen to shohi shakai no henyo

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抄録

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本稿は,20世紀初頭以降の日本における小売業態の変遷を日本の消費社会の変容と関連付けて考察することを課題とする。ここでは,消費社会を「コミュニケーションとしての消費が,幅広い階層の人々によって行われる社会」と定義する。20世紀前半,日本で最初の近代的小売業態として百貨店が登場したが,その背景には,日本における消費社会の成立があった。この時期の消費行動は「顕示的消費」(ヴェブレン)を特徴とし,百貨店は顕示のための商品を販売する業態としてこの時代にきわめて適合的であった。第2次大戦後の高度成長期には,チェーン組織の小売店(スーパーとメーカー系列小売店)が急成長した。この時期,日本の消費社会は大衆消費社会へ転化し,人々の消費行動はリースマンのいう「他人志向型」の特徴を示すようになった。チェーン小売店は,「他人志向型」消費と結びついた「標準的パッケージ」を流通させるのに最適な業態であった。1970年代後半以降,日本の小売業界は次々と新しい業態が参入して多様化した。一方,大衆消費社会は成熟・飽和段階に至り,消費も多様化・個性化して,ボードリヤールのいう「記号消費」の傾向が顕著になった。画一的・大量販売型小売業の後退と業態の多様化は,消費の多様化・個性化の反映であった。以上のように,小売業態の変遷と消費社会の変容の間には並行的な関係が認められ,両者を結びつけたのが,それぞれの時期の消費行動の特徴的なあり方だった。

故玉置紀夫教授追悼号

収録刊行物

  • 三田商学研究

    三田商学研究 48 (5), 165-185, 2005-12

    慶應義塾大学出版会

被引用文献 (1)*注記

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