流動資産・固定資産分類学説の総合的検討 : その概要(1)

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今日,実践的には,取得原価,時価,増価(償却原価)の三者が,いわば等価的に認められている。つまり,評価規約の視点からは併存会計であるが,ほとんどの会計学説は,これを合理的に説明できないでいる。筆者は,総合的検討シリーズの第2 弾として,今日の代表的会計学説と目されている主観のれん学説を取り上げたが,結論的には,理論的に破綻していると言わざるを得ない。 そこで,総合的検討シリーズの第3 弾として,森田哲彌によって主張された流動資産・固定資産分類学説を取り上げることとしたい。この学説は,原価評価と時価評価との併存の根拠を流動資産・固定資産という資産分類に求めた点に,その特質があるが,さらに,そうしたふたつの評価概念が併存している会計を,原価主義会計とみている点で,きわめて特異な会計学説と言ってよいであろう。 まず最初に,本号および次号において,その内容を紹介することにしよう。もっとも,森田理論は,1990年の文献「企業会計における収益(利益)認識基準の検討―実現主義の観点から」(『企業会計』第42巻第1 号)を分岐点として,基本的に異なった主張をしているので,ここでは,森田旧論および森田新論とよんで区別することにするが,流動資産・固定資産という資産分類が主張されているのは,森田新論であるから,当面の問題からすれば,森田新論だけを取り上げればよい。しかし,ここでは,森田新論の形成過程を理解するためにも,森田旧論,および森田旧論から森田新論への転回過程についても,概観することとしたい。

論文

Journal

  • 三田商学研究

    三田商学研究 51 (1), 57-80, 2008-04

    慶應義塾大学出版会

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