鳩山民主党政権と既得権勢力

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  • Hatoyama Administration and Vested Political Forces

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抄録

type:Article

2009年9月、長年政権の座にあった自民党に代わって、鳩山由紀夫を首班とする民主党政権が誕生した。国民は官僚主導の政治を変え、政治主導を提唱した民主党に変革を期待した。しかし、結果は、鳩山政権が普天間基地の移転問題でつまずき、民主党は、マニフェストになかった消費税の増税をはじめ、多くの公約違反で、2012年の衆議院と2013年の参議院の選挙で惨敗した。菅政権と野田政権が、消費税増税をいわず、民主党のマニフェストにもっと忠実であったならば、これほどまでの敗北はなかったに違いない。その意味で菅直人、野田佳彦、両氏の罪は重い。なぜならば、日本の政治史の歴史的快挙である政権交代という、日本の民主主義の成長の機会を逃し、官僚支配の自民党政治に後戻りさせたからである。  この過程を見てみると、既得権益を守ろうとする勢力、すなわち現状維持派の勢力が、いかに強かったかがわかる。自民党、官僚、財界、大手マスメディア、そして、その背後にいるアメリカ、こういった改革を阻止する勢力の抵抗は激しかった。日米関係をより対等な関係にするため、普天間の海兵隊基地を国外、最低でも県外に移転しようとする鳩山首相のもくろみは、アメリカはもとより、本来、首相を支援し、首相の考えを政策に反映させるべき外務省、防衛省の官僚からの抵抗にあった。しかし、官僚の抵抗は、民主党が政権を取る以前から始まっていたのである。小沢総理をなんとしても阻止したい検察は、2009年から本格的に小沢たたきをはじめた。この両者の戦いは1990年代から続いていたが、2009年の来るべき総選挙で、民主党の勝利が濃厚になったまさに、その矢先に検察は小沢の政治資金問題を持ち出した。  小沢攻撃は検察ばかりではなかった。自民党はもとより、大手マスメディアの小沢金権政治に対する批判が高まり、世論の批判をバックに、民主党内からも小沢一郎に対する批判が続いた。その結果、小沢排除が民主党内で進み、小沢は党幹事長として、鳩山内閣に入閣することができなかった。結果として、鳩山・小沢による官僚主導から政治主導への政治改革は頓挫した。その後、財務省主導の消費税増税案が、菅、野田両政権で具体化し、民主党は小沢一郎との内部抗争も重なって、国民の信を失っていった。  本稿では、民主党政権下の安全保障政策を中心に、小沢排除、官僚の抵抗、アメリカの対日政策をみていく。小沢問題における検察の勝利、消費税増税法案の通過に象徴される財務省の勝利、そして、普天間移転における外務、防衛両省の勝利と、ことごとく官僚の勝利に終わった。民主党が目指した官僚政治の打破は失敗に終わり、自民党による従来の政治に戻ったのである。

identifier:http://reposit.sun.ac.jp/dspace/handle/10561/956

収録刊行物

  • 研究紀要

    研究紀要 14 163-174, 2014-01-15

    長崎県立大学

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