インクルーシブ教育の理論および起源に関する研究 : 1970年代以降のイギリスを中心に

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Other Title
  • A Study of the Theory and Origin of Inclusive Education : Focusing on England after the 1970's
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本論文の目的は、今日の障害児教育政策の潮流となっている「インクルーシブ教育」の理論および起源を明らかにすることである。そして、そのために、インクルーシブ教育の先導的役割を果たしているイギリスの1970年代以降の展開を中心に、世界的な動向を、政治や経済といった社会的要因との関係を踏まえ、分析・考察する。本論文では、まず、インクルーシブ教育の源である「インクルージョン(Inclusion)」および政策分野における「ソーシャル・インクルージョン(Social Inclusion)」、「ソーシャル・エックスクルージョン(Social Exclusion)」とは何かを分析する。また、障害児教育政策の発展過程におけるインクルージョンの位置づけを明らかにし、インクルーシブ教育の世界的な動向について考察する。その結果、EUやイギリスなどのEU加盟国では、ソーシャル・エックスクルージョンに対処する戦略として、ソーシャル・インクルージョンがその中心的な対応策とされており、二つは対を成す概念であることが明らかになった。その背景には、政策主体の社会をどう統合し、安定させていくかという戦略が隠されているのである。また、インクルーシブ教育は、ノーマライゼーションに端を発する世界的な動向の影響と前段階であるインテグレーションを経て発展しただけではなく、他方でソーシャル・エックスクルージョンに出自を持ちながら、複合的な社会的要因との関係の中で生み出され、教育政策として結実するに至ったことが明らかになった。そして、インクルーシブ教育の根底には、ソーシャル・エックスクルージョンへの闘いがあり、差別ではなく、差異を承認し、包摂する通常教育の改革とインクルーシブな社会の実現があることがわかったといえる。

Journal

  • 人間文化研究

    人間文化研究 18 39-53, 2012-12-21

    名古屋 : 名古屋市立大学大学院人間文化研究科

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