津波災害と学校 : 東日本大震災時の津波避難行動から学んだこと

書誌事項

タイトル別名
  • Tsunami and Schools : What We Learned from Evacuation Behaviors during the 3.11 Tsunami
  • ツナミ サイガイ ト ガッコウ : ヒガシニホン ダイシンサイジ ノ ツナミ ヒナン コウドウ カラ マナンダ コト

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説明

本報は,東日本大震災の津波被災地域におけるいくつかの小中学校に着目し,津波に対する避難行動がどのように行われたか,また避難行動がどのように行われるべきだったのか,についての若干の考察を試みたものである.東日本大震災での事例を調べてみると,ほとんどの学校において津波災害から児童生徒を守るための最善の努力が試みられたことについては疑いの余地はないものの,結果的に避難行動がうまくできた学校とそうでなかった学校とが生じてしまったことは事実であろう.社会一般からすれば,このような避難行動がうまくできた学校とそうでなかった学校とでは,評価のされ方に大きな違いが現われるかもしれないが,実際には,両者の間にはそれほど大きな違いはなく,その差は紙一重だったのかも知れない.本報では,結果の評価を行うことが目的ではなく,学校を中心とした地域の避難行動についての多くの事例から,今後の参考となる教訓を学びとることを目的としている.ここで得られた教訓の第一は,今回の津波災害における避難行動の巧拙が,事前の防災教育や避難訓練の実施状況と密接に関係していると思われる点である.的確な避難行動を行うためには,何よりも綿密な事前計画が必要であり,避難路は事前に準備しておき,なおかつ繰り返し実地訓練を重ねておくことが肝要である.教訓の第二は,災害発生時における学校の教職員には判断力(緊急を要する場合が多いので決断力と言ってもよい)が求められる点である.避難行動に際しては学内に留まるべきか,それとも学外に避難するべきかという重要な決断を迫られ,学校の教職員にも防災の専門家並みの見識が求められる.将来的にはそのための教育支援が必要になるものと考えられるが,当面の津波対策としては,無駄になることを恐れず,安全側の避難場所を選択する以外に方法はないものと考えられる.すなわち,広大な平野においては3階建て,もしくは4階建ての学校校舎であれば屋上避難を,海岸地形の複雑な三陸リアス海岸においては,何よりも近隣の高台(できれば退路を断たれる心配のない高台)への避難が望まれる.

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