航空交通管制システムの発展プロセス

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  • コウクウ コウツウ カンセイ システム ノ ハッテン プロセス

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抄録

本稿の目的は,航空交通管制システムの歴史と現状,将来の展望について記述することにある。具体的には,航空交通管制システムの歴史的な発展プロセスと航空交通管制業務を説明した上で,現状のシステムをとりまく問題点と次世代航空交通管制システムについて説明し,最後に,まとめと今後の研究課題を提示する。本稿の概要は以下のとおりである。航空交通管制システムは,航空交通量の増加とともに発展してきた。航空機が発明された当時の航空交通量は多くなかったため,パイロットは比較的自由に飛行することが可能だった。しかし航空機の数が増加すると,航空機同士の衝突を防ぎつつ航空機を効率的に飛行させるための交通整理として,航空交通管制の必要性が生じた。このような状況のなかで,初期の航空交通管制システムとしてライトガンや無線電話,レーダーなどの技術が導入され,空港に設置された管制塔において,航空交通管制官がこれらの技術を用いて管制業務を行うようになった。日本の航空交通管制システムは第二次世界大戦後に開始された。当初は日本に駐留することになった米軍が航空交通管制業務を行っていたが,その後,徐々に日本へ移管されるに至った。航空交通管制システムが日本へ移管された後も,航空交通量の増加や航空機事故などを契機としてシステムの整備が進められた。航空交通管制システムに関連した業務は,航空交通業務とよばれる。航空交通業務には,航空交通管制業務と緊急業務,飛行情報業務が含まれる。このなかで,航空機が出発地の空港の駐機場を離れてから到着地の空港の駐機場に入るまで直接的に航空機のコントロールを担うのは航空交通管制業務である。航空交通管制業務は,飛行場管制業務と着陸誘導管制業務,進入管制業務,ターミナルレーダー管制業務,航空路管制業務の5つの業務から構成され,各航空交通管制官はこれら業務の一部を担当している。このように,航空交通管制システムは数多くの管制官が多様な業務を行なうことによって成り立つ非常に複雑な組織である。現在に至る航空交通管制システムの発展を推進した要因のひとつである航空交通量の増加は,現在でもとどまることをしらない。航空交通量の増加は空港や上空の混雑を増大させ,航空機の運航の遅延を生じさせる。世界的に見られる航空交通量の増加に対して,現在,次世代航空交通管制システムの開発・整備が進められている。航空交通の国際機関である国際民間交通機関(International Civil Aviation Organization; ICAO)は,次世代航空交通管制システムの構想であるFANS構想(新CNS/ATM構想)を提言し,日本でもこの構想に基づいた次世代航空交通システムの開発・整備が進められている。日本の次世代航空交通システムを構成する主要な要素としては,運輸多目的衛星(MTSAT)の利用と広域航法(Area Navigation; RNAV)の導入,航空交通管理センター(ATMセンター)の整備を挙げることができる。以下では,次の順序で議論を行う。第1節では,航空交通管制システムの成立とその発展を記述する。第2節では,現在の航空交通管制システムを構成する業務の内容,特に航空交通管制業務について説明する。第3節では,現在の航空交通の問題点を提示した上で,次世代航空交通管制システムの概要を記述する。第4節では,第3節までのまとめと,今後の研究課題について述べる。

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