オクタヴィア・ヒルと現代

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  • Octavia Hill and Today
  • オクタヴィア ヒル ト ゲンダイ

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type:P(論文)

オクタヴィア・ヒルは(1838-1912),イギリスのヴィクトリア時代におけるスラム改善を住居管理と結びつけて行い,女性ワーカーを養成し,その延長上でナショナル・トラスト創設に尽くした女性である。しかし,住居管理の方法や,住居分野への公的介入への批判,晩年には女性参政権に反対したことなどから,論争の的となってきた。20世紀を経た今日,オクタヴィア・ヒルがどのように評価されているかをみようとしたのが,本稿の目的である。概要は以下の通り。1)イギリスにおける再評価は1970年代末からみられる。2)ウィズビーチにあるオクタヴィア・ヒル生誕地博物館では,地域の重要な観光資源となっており,地域の活性化と結びつき,活動はより活発化してきている。3)オクタヴィア・ヒルが管理した住居群が残されており, ヒルが求めた住居形態と管理のあり方を実感することができる。4)オクタヴィア・ヒルが設立したオクタヴィア・ヒルハウジングトラストは, ,オクタヴィアの意志を継承して住宅供給とサービスを行ってきたが,さらに社会のニーズに応え,組織を拡大し,オクタヴィア・ハウジング・エンド・ケアとなる。5)公認住居管理協会(CIH)は,「無批判にオクタヴィアの哲学を適用すること」に批判的ではあるが,住居管理を専門職に高め,資格認定を行い,会員数は飛躍的に増加している。6)CIH香港支部は公共住宅の管理の必要から出発し,大学との連携により住居管理の専門家を養成してきた。80年代以降役割を転換すると共に,アジア太平洋支部へと発展する。以上から,現代におけるオクタヴィア・ヒルに対する評価としては,(1)女性パイオニアであること,(2)新市場主義のボランタリズムの推進と結合して評価され,(3)社会のニーズに応えて組織を改革し,(4)香港からアジア太平洋地域へと影響を拡大しているとまとめられる。

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