語りにみる進行がん患者の社会的側面の変化と苦痛

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タイトル別名
  • カタリ ニ ミル シンコウ ガン カンジャ ノ シャカイテキ ソクメン ノ ヘンカ ト クツウ
  • Social Changes and Pain in Progressive Cancer Patients Discovered Through Narrative

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説明

本研究の目的は,がん患者の社会的側面が,病状の進行に伴いどのように変化し,患者を取り巻く環境の中で「社会的自己存在」をどのように認識しながら生きているかを記述することで,社会的苦痛に対する看護介入の示唆を得ることである。研究デザインは,社会的側面が個人の生き方やそれまでの軌跡に関連したものであるため,個別事例の質的記述を選択した。調査方法としては,定期的な外来受診日の様子観察と,社会的側面が大きく変化したと予想される病状や治療効果についての説明があった時に面接を行った。その結果,A氏は社会的側面として,(1)""家族も私も藁をもつかむ思い""に象徴された『家族社会の中心にあった「社会的自己存在」』,(2)""泣きたくなったら,家族の前で素直に悲しむ""に象徴された『ありのままを受入れられた「社会的自己存在」』,(3)""またコーラスに参加する自信がついだ""に象徴された『がんと共存しながら広がる「社会的自己存在」』,(4)""生きていく意味が分からない""に象徴された『役割喪失により希薄化した「社会的自己存在」』という4つの変化を体験していたことが明らかとなった。さらに,がん患者の全人的QOLの維持,向上のために必要な社会的苦痛への看護介入としては,(1)患者と同じ社会に属するメンバーが環境を調整できるよう,指導的,情緒的支援を行う,(2)療養環境の中で患者が「社会的自己存在」を認識できるような人間的つながりを形成する,の2つが考えられた。

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