江戸時代後期の掛香に関する一考察

書誌事項

タイトル別名
  • エド ジダイ コウキ ノ カケゴウ ニ カンスル イチコウサツ
  • A Study on the Kakegô in the latter Edo era

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説明

本稿は,江戸時代後期,町人社会に流行した掛香について,その形態,材質,用途の特色を,関連の浮世絵42点の分類および文献資料と照合考察することによって,世相・服装との関連性を明確にするものである。 慶長~寛永期(1596~1644),掛香は球形の匂袋の左右に紐を付け,首から胸元に掛けて携行する形態で遊女らにみられた。小袖服飾との関係では,帯幅が広くなると,次第に懐中物が発達し,貞享期(1684~88) には懐に納める匂袋へ変わる。天明期(1781~89) に入ると,掛香は紐の両端に匂袋を付け,首に掛けて袋を両袖に落とす形態で普及し,その様子は寛政~文政期(1789~1830) の浮世絵に描写される。また,当時の衣料を代表する緋縮緬の裁端裂を材料とした掛香は,それらを使った服飾と共に発達し,絞りの生地でも作られた。さらに,抜き衣紋により胸元から背中まで広く抜かれた肌には,白(襟白粉)と赤(掛香)の対照美が表現され,町人の粋をも表わすものである。そして,男女を問わず身だしなみとして掛香は携行され,その流行から,町人の生活文化の向上をとらえることができる。

収録刊行物

  • 研究紀要

    研究紀要 21 13-18, 1990-01-31

    文化女子大学

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