本稿では, フリッツ・イェーデの『青年運動か, それとも青年の育成か』(1917年)における指導者像を, 彼の教育観に影響を与えたルソーの消極教育(Negative Erziehung)における指導者像や, 20世紀初頭におけるドイツの改革教育を代表するグスタフ・ヴィネケンの指導者像と照らし合わせつつ明らかにする. フリッツ・イェーデの指導者像は, いわば「導かない指導者」ともいえる, 語義矛盾を含んだ指導者像であり, 指導者が青年を導くのではなく, 両者が対等に向き合って互いに関係性を形作るという共同体モデルを起点として考え出されたものであった.
Human and Environmental Studies 27 115-126, 2018-12-20
京都大学大学院人間・環境学研究科