土地区画整理事業についての最近の判例の動向

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  • トチ クカク セイリ ジギョウ ニ ツイテ ノ サイキン ノ ハンレイ ノ ド

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抄録

本論文は土地区画整理事業に関係する最近の判例の傾向を概観したものである。もっとも,わが国の裁判所は違法な行政庁の処分の取消を求める抗告訴訟の要件をきわめて厳格に解するため,司法救済の途は狭く,その結果,行政事件訴訟の数自体が減少傾向にあり,検討すべき判例の数も少い。特に,都市計画の決定や区画整理事業決定については,関係する当事者にとって最も重大な影響を生ずる行政庁の行為であるにもかかわらず,後続する具体的処分の際に争訟性を認めれば足りるとする最高裁判決が先例となり,訴の利益を否定され訴却下の判例が多い。計画行政に関する手続法の確立されていない今日,国民の権利救済の視点を欠くものといわなければならない。次に,区画整理事業の手続の中,具体的な処分というべき仮換地指定や換地処分にかかわる訴訟でも,適正手続や関係者の公平を保持する照応の原則について,施行者側,特に行政の裁量の範囲を容易に認める傾向がつよく,原告の請求を認容するものは少ない。この種事業については,処分の違法性が認められた場合にも,事情判決がなされることになるのであるから,計画段階での争訟の途を認めるべきであり,同時に住民意見を反映する行政手続が確立されるべきと考える。

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収録刊行物

  • 総合都市研究

    総合都市研究 (28), 39-44, 1986

    東京都立大学都市研究センター

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