日本における長期雇用の制度化プロセス : 制度理論からの仮説の提示

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タイトル別名
  • Institutional Process of long term employment in Japan : Hypothesis based on Institutional Theory
  • ニホン ニ オケル チョウキ コヨウ ノ セイドカ プロセス セイド リロン カラ ノ カセツ ノ テイジ

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日本的人事管理さらに日本的経営の中心的特色である終身雇用と呼ばれる長期雇用について、その普及・定着メカニズムを社会学・組織社会学における制度理論(以下に制度理論と記載)から分析し、仮説を提示する。日本において工場労働者を含む長期雇用が始まったのは20世紀のはじめとする説が多いが、この時代の長期雇用は経営側が解雇権を留保したものであり、経営側の解雇権が制限されている戦後の終身雇用と呼ばれる長期雇用とは性格を異にする。そこで本論文では、戦後においてなぜ・どのように日本で長期雇用が普及・定着していったかを分析対象とする。  制度理論では、社会制度が組織・人に与える影響を中心テーマとしている。制度理論における“制度”には、公式に文書化された制度と、公式の制度ではないが長い間社会に定着した社会習慣の2つの側面があり、特に2番目の社会習慣を重視し、社会習慣が組織・人の行動に与える影響を分析していくところに制度理論の特色がある。さらに制度理論では組織や人が社会制度に適応していく要因(制度化要因)として規制、規範、認知という3つの要因を重視しており、本論文ではこの3つの要因から戦後日本における長期雇用の普及・定着メカニズムを探っていく。さらに日本における社会制度・ビジネスシステムの特色からも長期雇用の普及・定着にアプローチしていく。  本論文で提示した仮説は、日本の長期雇用は模倣と当然性という認知要因、理論的支持の充実と社会的責任いう規範要因、裁判例による解雇権濫用法理の確立という規制要因、という3つの制度化要因が複雑に絡み合って普及・定着してきたというものであり、さらにビジネスシステムを構成する要因のひとつである長期雇用という雇用システムは、全体的な日本型ビジネスシステムの確立とともに普及・定着していったというものである。

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