日本語の物語文における言語知識の発達過程の考察―発話数・単語数・形態素数・平均発話長の解析―

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書誌事項

タイトル別名
  • ニホンゴ ノ モノガタリブン ニ オケル ゲンゴ チシキ ノ ハッタツ カテイ ノ コウサツ : ハツワスウ ・ タンゴスウ ・ ケイタイ ソスウ ・ ヘイキン ハツワチョウ ノ カイセキ
  • Developmental Changes in Number of Utterances, Words and Morphemes in First-Language Narratives

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説明

本研究は、日本語を第一言語(母語)とする子どもの物語文の発達過程に関する研究である。物語文の発達過程には、言語知識の発達と談話構成能力の両方が関わっていると考えられるが、ここでは、言語知識の発達に焦点を当てる。3~11歳までの子どもの物語文の発達を年齢による発話数、単語数、形態素数の推移の観点から分析した。さらに、文法発達の過程を、形態素MLU(MLUm)と自立語MLU(MLUw)を指標として分析した。その結果、発話数の変化は全年齢であまり大きく増加しないこと、単語数、形態素数は3~5歳で著しく増加することが分かった。MLUmとMLUwは、3~5歳で増加が見られ、5歳で大人の値に近づくことが明らかになった。以上から、この物語文においては、3~5歳の間では、言語知識の発達が顕著に見られることが明らかになった。先行研究では、第一言語発達において言語知識の発達は比較的早期で、3歳頃には、すでに物語の出来事を描写できる言語知識を備えていること(Inaba,1999)、局所構造を構成する能力は、3歳頃から現れ、主に5歳ごろまでに発達すること(Inaba,2001)が示唆されている。3~5歳の単語数、形態素数はこれらの能力と相まって増加しているのではないかと考えられる。MLUmとMLUwの増加は、この時期の連結表現の発達(宮田・稲葉,2012)による文構造の複雑化と相まっているのではないかと推察される。また、MLUmとMLUwの値を比較すると、MLUmの方が文法発達の推移を敏感に捉えていることが分かった。しかし、この物語文では、5歳で大人のMLUm、MLUwに近い値に達することから、5歳以降の発達を敏感に捉えるには適さないことが示唆された。本研究は物語文の言語知識の発達を数量的な変化でのみを捉えたものなので、発達過程を解明するには、語彙(述べ語数・異なり語数)、形態素の種類や機能、発話の文法構造等を談話構成能力の発達と合わせてさらに細かく分析する必要があり、これを今後の課題としたい。

収録刊行物

  • 教科開発学論集

    教科開発学論集 5 23-32, 2017-03-31

    愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)

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