西洋ナシの葉やけに関する研究(第1報) : 葉の組織学的観察

書誌事項

タイトル別名
  • ハ ノ ソシキガクテキ カンサツ
  • Studies on Leaf Burn of Pear Trees1 : Histological Observation on Pear Leaves
  • セイヨウナシ ノ ハヤケ ニカンスルケンキュウ ダイ1ポウ : ハ ノ ソシキガクテキ カンサツ

この論文をさがす

抄録

論文(Article)

西洋ナシ(P.Communis)の‘Bartlett'ほかいくつかの品種においては,葉が夏から秋にかけて,きわめて短時間内に黒褐色に変り,ついには落葉してしまう現象がみられる.従来との現象は葉やけと称され,生理的な障害としてみなされている.しかしその発生原因,機作などにづいては充分明らかにきれていない.この報告は,葉やけ現象解明のための基礎的な観察として,西洋ナシの葉の形態的な特徴を明らかにし,さらに葉やけをおこした葉について組織学的な観察を行なったものである.その結果を要約するとつぎの如くである,1.西洋ナシの'Bartlett','Red Bartlett'および'La France'の3品種の聞においては,葉の組織形態的な面で,いちじるしいちがいは認められなかった.したがって,葉やけは葉の組織構造上の欠かんによって発生するものとは考えられない.2.'Battlett'および'La France'の葉組織のペクチン質,多糖類,タンパク質およびRNAについて組織化学的な検出を行なった.その結果,健全葉においては,葉の令が進むにつれて,いずれも物質の存在を示す陽性反応が顕著となり,とくにさく状組織ば多糖類,タンパク質,RNAの集積が顕著であった.一方葉やけの初期症状ともいえるnecrosisを起した組織は,Ruthenium red,PAS反応,Pyronin-methyl green染色に対して,いずれも陰性の反応しか示さなかった.これは,この組織の細胞が,なんらかの原因によって,まずその代謝作用に異常をきたし,その結果原形質の分離およびぎょう固がおこり,続いて細胞内容全体の酸化をきたしたために,染色剤の侵入がさまたげられたことによるものであろう.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ