水稲の節水栽培による田畑輪換栽培の安定化(2) : 水稲の節水栽培が輪換畑の小麦・大豆の収量の安定化に及ぼす効果

抄録

湿田の田畑輪換栽培において農業土木的な排水対策や営農排水対策に加えて,水稲作において節水栽培を実施することにより畑転換を容易にし,畑地化を促進し輪換畑の作物の収量を安定化する方法を確立しようとした。ここでは,田畑輪換栽培に水稲の節水栽培を導入することにより排水性を良くし,輪換畑の小麦,大豆の生育・収量に及ぼす効果を明らかにした。結果の概要は以下のとおりであった。1. 水稲の節水栽培を行うことにより排水性が向上した。その結果,畑転換後の小麦作では慣行水管理を行った圃場に比べて,降雨があっても地下水位が上昇しにくかった。さらに,作土の土壌水分も早く低下し,輪換畑の畑地化が促進された。2. 畑転換後1作目の小麦作では,節水栽培により播種時の作土の土壌水分が低下し,砕土率が高くなり,小麦の出芽数は慣行水管理区より約10%向上した。3月から5月の登熟期間中は降水量が多く地下水位が高かったが,節水区では登熟が良く,m2当たり粒数が増加しても千粒重の低下が小さく収量は14%向上した。3. 畑転換2作目の大豆作では,水稲の節水栽培により播種時の作土の土壌水分が低下し砕土率が高くなったが,大豆の出芽に対する効果は認められなかった。開花期頃の大豆の生育は向上したが,干ばつ気味であったこともあり,収量が増加するには至らなかった。4. 水稲の節水栽培を導入する効果は,転換作物により異なった。小麦では明らかに水稲の節水栽培による増収効果が認められたが,大豆ではその効果は明らかでなかった。5. 畑転換後作付けを重ねるにしたがい,播種時の砕土率は次第に高まった。畑転換2年目,3作目以降は慣行水管理を行った圃場でも80%以上の十分な砕土率を得ることができた。水稲の節水栽培を行うことによる砕土率の向上効果は,条件の悪い,畑転換1年目,1作目で大きかった。

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