ビワの新品種‘涼風’,‘陽玉’

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抄録

長崎県果樹試験場では、1973年(昭和48年)から農林水産省の指定試験としてビワの育種を開始し、交雑育種により、1996年に中生種の2品種を育成した。 1.‘涼風’は1974年に‘楠’に‘茂木’を交配して得た実生のなかから‘ビワ長崎1号’を選抜した。 1988年からビワ第1回系統適応性検定試験に供試して特性を検討した結果、品質優良な中性品種であることが確認され、1996年8月20日に‘涼風’と命名され、‘びわ農林2号’として登録・公表された。また、種苗法に基づき1999年11月30日付けで登録番号第7570号として品種登録された。 (1)‘涼風’は、‘茂木’よりやや早く熟する中生で、育成地の長崎県大村市では5月下旬から6月上旬に収穫される。 (2)樹勢は、中程度で樹姿はやや開帳し、枝の大きさは中で、発生量は密である。花穂の形及び大きさは中程度で、小花こうはやや下向きである。(3)果形は短卵形から短楕円形で、果実の大きさは55g程度で‘茂木’よりも明らかに大きい。果皮、果肉ともに橙黄色を呈し、果肉硬度は中程度で果汁はやや多い。果汁の糖度は高く、酸含量が少なく、食味は‘茂木’程度に良好である。紫斑症等の果面障害の発生は少なく、外観良好である。 (4)樹勢が‘茂木’よりやや弱いので、樹勢の維持に注意する必要がある。 2.‘陽玉’は1973年に‘茂木’に‘森本’を交配して得た実生のなかから‘ビワ長崎4号’を選抜した。1988年からビワ第1回系統適応性検定試験に供試して特性を検討した結果、品質優秀な中生品種であることが確認され、1996年8月20日に‘陽玉’と命名され、‘びわ農林3号’として登録・公表された。また、種苗法に基づき1999年11月30日付けで登録番号第7571号として品種登録された。 (1)‘陽玉’は‘茂木’より若干遅く熟する中生で、育成地の長崎県大村市では6月上旬に収穫される。 (2)樹勢はやや強く、樹姿は直立性である。枝の大きさは中で、発生量は中程度である。 (3)果形は短卵形から長卵形で、果実の大きさは60g程度で‘茂木’より明らかに大きい。果皮、果肉ともに橙黄色を呈し果肉は軟らかく、果汁が多い。果汁の糖度はあまり高くはないが、糖酸のバランスが良く食味は‘茂木’より優れている。収穫期に紫斑症、そばかす症の発生が見られることがあるが、外観は概ね良好である。 (4)着花性がやや劣るので、枝の誘引などにより着果枝の確保を図る必要がある。

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