運転者の心理的生理的反応に基づく林道幾何構造の評価 : 評価尺度としての心拍数と最高血圧の変動

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  • ウンテンシャ ノ シンリテキ セイリテキ ハンノウ ニ モトヅク リンドウ キカ コウゾウ ノ ヒョウカ ヒョウカ シャクド ト シテ ノ シンパクスウ ト サイコウ ケツアツ ノ ヘンドウ

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抄録

人間工学的評価尺度として従来から使われてきた心拍数変動に,新たに最高血圧変動を加えて,既設林道の平面単曲線を対象にして,曲線半径,走行速度,走行方向等に対する運転者の心理的・生理的負担を実験的に分析した。 曲線半径,走行速度と心拍数変動の間には高い相関関係があることが改めて確認された。最高血圧との間には,より特徴的な関連性があることが判った。すなわち心理的負担が大きいと考えられる事象,例えば小半径曲線部を相対的に高い走行速度で通過する場合には最高血圧の増加傾向が両者の相乗効果により顕著になる。 走行方向に関しては,右山回りの場合に心拍数と最高血圧の双方において増加数が常に高くなる。右山回りと左山回りの間には一定の規則性があるが,走行速度の上昇につれて,一層明確になる。これは主として,車両の構造上の理由,すなわち運転者の視点の軌跡が描く曲線半径の違いに基づく視距の差によるものである。このことは,幾何学的な事柄であり,曲線半径の大小の問題に置き換えて考えることができる。 車両の走行速度が高速時の心拍数の増加数と低速時の心拍数増加数の差,すなわち図5-5の各曲線間の縦距は,曲線半径が変化してもほとんど均一である。それに対して,最高血圧の変動を尺度とする図5-10および図5-11の被験者Yと被験者Gの高速時と低速時の最高血圧増加数の差は,曲線半径が大きくなり心理的圧迫が小さくなるにつれ,その差も小さくなり走行速度による影響が微小になる。 曲線半径の評価尺度としては,心拍数変動曲線の相関係数は最高血圧変動のものに劣っていることから,最高血圧の増加数が優れていると言える。また。走行速度を重視する場合の評価尺度としては最高血圧の増加数がより優れていると言える。これらのことから、林道路線の幾何構造と車両速度そして運転者の心理的生理的負担に関して議論する場合は,最高血圧の変動のみで,ほぼ評価できるものと判断する。 図5-5,図5-10の回帰曲線には明瞭な変曲点は認め難い20mないし30m付近で曲線に匂配が穏やかになっていることから,路線設計における曲線半径20m前後以下の小半径曲線の設定は,心理的生理的に大きな負担を強いることを意味しているので,設計車両速度の高低にかかわらず,可能な限り避けるべきであると言える。

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