農業集落排水に由来する濃縮汚泥の水稲への利用

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  • ノウギョウ シュウラク ハイスイ ニ ユライ スル ノウシュク オデイ ノ スイトウ エ ノ リヨウ

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抄録

濃縮汚泥を安全に農地還元し地域資源のリサイクルを図るため、廃掃法に定められた濃縮汚泥の処理法(生活環境の保全及び公衆衛生上支障を生じさせない方法)、土中汚泥注入機による濃縮汚泥の安全で効果的な施用法について検討した。1.農業集落排水処理場から発生する濃縮汚泥は、水分約98%の液状で、家畜ふん堆肥に比べ加里含量が少ない。この濃縮汚泥は、生石灰0.5(W/V)%添加によって、pHが12以上になり、大腸菌群を検出限界以下に抑制した。窒素は生石灰処理直後から減少し処理日数に影響されないので、大腸菌群の死滅効果から判断して濃縮汚泥に生石灰処理後3日目以降に利用すれば安全である。2.湿地ブルドーザーを改良した土中汚泥注入機(広島県農業開発公社開発)は、濃縮汚泥を搭載し走行しながら土壌中にリッパーを通して注入する。したがって、濃縮汚泥を見せず、臭わせない施用が可能となった。なお、この土中汚泥注入機の走行によって、土壌の貫入抵抗は高まらなかった。3.‘コシヒカリ’(豊平町)では、秋と春の合計2回生石灰処理濃縮汚泥施用(8m3/10a/年)、‘八反錦1号’では春の1回(4m3/10a/年)に加え、葉色診断から判定した穂肥(化成肥料)の施用で慣行と同等の生産が可能であった。また、生石灰処理濃縮汚泥は、玄米中に重金属含量を増加させず、また、品質に影響を及ぼさなかった。4.基肥代替として、秋と春の合計2回濃縮汚泥施用(8m3/10a/年)を2年間続けても、土壌中カドミウムの含量は高まらなかった。同一水田に濃縮汚泥を連年施用(8m3/10a/年)しても、土壌の亜鉛含量の汚泥施用基準である120mg/kg到達は、三和、豊平町とも約30年要すると推定される。5.以上の結果から、土中汚泥注入機を利用した生石灰処理濃縮汚泥の施用は、水稲の収量・品質を低下させることなく安全に利用できる。

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