水稲苗の種類による出穂日の変動と障害型冷害による稔実歩合との関係

抄録

田植えや収穫期の時期的な分散および障害型冷害の危険分散を目的として、出穂期の分散化を図る研究を行っている。この研究の中で、苗の種類を変えることによる冷害危険期分散の効果について2003年の冷害年に検証を行った。2003年は、6月以降、低温と日照不足が続き、試験地宮城県では、障害型冷害が多発した。被害にあった水田では、同一圃場内においても出穂期間が例年より長く、また、出穂が早いほど被害が大きかったが、本実験において、その傾向をより詳しく解析することができた。水稲ササニシキの中苗と稚苗、乳苗それぞれを、1株4個体、畦間30cm、株間15cmで水田に移植栽培し、株内全ての茎の出穂日を調査した。収穫後、各穂の稔実歩合を調べた。中苗移植区、稚苗移植区、乳苗移植区の順に出穂し、出穂期間は中苗移植区で11日間、稚苗移植区で13日間、乳苗移植区で9日間と例年より長かった。50%が出穂した計算上の出穂日の中苗移植区と稚苗移植区の差は4.7日、稚苗移植区と乳苗移植区の差は4.2日であった。稔実歩合は、苗の種類にかかわらず、8月10日出穂茎から、8月20日出穂茎までは、遅く出穂した茎ほど、直線的に高くなった。また、8月20日以降に出穂した茎では、同程度の稔実歩合であった。精玄米重は中苗移植区で少なく、屑米重などから低温による不稔が主要因であったことが示された。特に、乳苗移植区では、低温障害による不稔は回避でき、苗の種類により出穂期を分散させ、障害型冷害の被害を分散できることが示された。

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