犬Babesia gibsoni感染症の分子生物学的診断、貧血と再発の病態生理、クリンダマイシン治療

書誌事項

タイトル別名
  • Canine Babesia gibsoni Infection - Molecular Biological Diagnosis, Pathophysiology of Anemia and Relapse, and Chemotherapy with Clindamycin
  • イヌ Babesia gibsoni カンセンショウ ノ ブンシ セイブツガクテキ シンダン ヒンケツ ト サイハツ ノ ビョウタイ セイリ クリンダマイシン チリョウ

この論文をさがす

説明

犬Babesia gibsoni(B.gibsoni)感染症の感染初期、慢性期、キャリアー犬では、低寄生率を示し血液塗抹による原虫の確認が難しいがPCR法では0.0001%の低寄生率でも検出可能であった。バベシア性貧血は、脾臓などの貪食細胞の活性化、赤血球の酸化障害、赤血球膜へのIgG抗体の結合、および赤血球の脾や肝の貪食細胞への貪食など一連の病態生理学的過程が関与する。また、時として数週間の間隔でより重篤な再発を繰り返す難治性バベシア症例では液性・細胞性免疫の抑制が認められた。本症の特効薬diminazene diaceuraeは中枢神経障害などの重篤な副作用をしばしば引き起こし、本薬に代わる安全な化学療法が求められる。そこで、クリンダマイシン(CLM)の実験的犬B.gibsoni感染に対する治療効果を検討した。バベシア感染後の急性期において、CLM治療群では、非治療群にみられた顕著な貧血、食欲不振および元気消失などの臨床症状は認められなかった。パラジテミアは治療・非治療群間に有意差はなかったが、メイギムザ染色末梢血液塗抹標本のバベシア原虫に退行性変化と思われる形態学的変化が多数の虫体に観察された。さらに、CD4+細胞数は治療群で治療後有意に増加し、バベシア特異抗体は慢性期では治療群の方が有意に高く推移し、かつ再発後の急速な抗体応答が治療群では認められた。CLM治療群で副作用は認められなかった。以上の結果から、CLMは犬バベシア病の治療薬として有効であることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ