矢部川流程の堰がアユの遡上と降河および仔魚の流下に及ぼす影響

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抄録

1)福岡県南部を流れる矢部川でアユの標識放流を行い天然群の遡上と繁殖のための降河の実態を調査した。2)稚アユの天然遡上は八女市の花宗堰で大部分が妨げられ、花宗堰より上流のアユ資源は、矢部川漁協による瀬高堰からの移殖放流分と考えられる。3)標識アユの混獲率から、花宗堰より上流部では産卵期にも降河しない親魚の存在が示唆された。4)10月下旬の産卵場は筑後市の船小屋ノ瀬と瀬高町の名鶴堰で確認され、この時期の主産卵場は船小屋ノ瀬、最下流の産卵場はは名鶴堰であったが、以前産卵があったとされる沖端川では産卵は確認されなかった。5)孵化仔魚の流下調査から、広瀬堰より上流での産卵が確認された。6)孵化仔魚の流下は9月から12月まで見られ、流下の盛期は10月から11月中旬であった。孵化までの期間から産卵は9月下旬には盛期に入ると思われる。7)名鶴堰、行基橋(沖端川)での時間帯別流下尾数から、流下のピークは複数見られ、主な産卵場が複数あることが示唆された。8)産卵場調査と孵化仔魚の流下調査から、産卵は上流の産卵場から始まり下流の産卵場へ移るものと思われる。9)矢部川では、アユの遡上と降河に堰が影響しているものと考えられる。親魚の降河を円滑にすることにより、下流での産卵量を増加させることができれば、流下仔魚の分水支流への流入量を減少させるとともに、産卵期を河口部の海水水温が下がった時期により多く流下させることができるものと思われる。

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