林木における不定胚による植物体再生系と遺伝子組換え系の開発に関する基礎的研究
書誌事項
- タイトル別名
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- リンボク ニ オケル フテイハイ ニ ヨル ショクブツタイ サイセイケイ ト イデンシ クミカエケイ ノ カイハツ ニ カンスル キソテキ ケンキュウ
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説明
育種においては交雑により有用な遺伝子を集積する必要がある。しかし、林木は開花までの期間や成長期間が長いので交雑育種を行うことは長い年月を要する。一方、遺伝子組換えには他の形質に影響を及ぼすことなく短期間で目標形質を林木に付与することができる。したがって、遺伝子組換え技術を利用すれば林木の育種を短期間で行なうことができると考える。しかし、我が国の林木では遺伝子組換え技術が確立されている樹種はない。そこで、本研究では遺伝子組換え系を開発し、我が国の林木の「遺伝子組換え育種」に資することを目的とした。遺伝子組換え系を開発するためには、効率の良い植物体再生系が必要となるので、まず不定胚分化を経て植物体を再生させる方法について検討した。材料は、ヒノキ、スギおよびクヌギの精英樹の未成熟種子とコシアブラの成熟種子とした。これらの材料からembryogenic issueやembryogenic callusなどを誘導し、それらを増殖させた後に不定胚を誘導する条件を明らかにした。また、不定胚を発芽させて植物体を再生し、それらを順化させる方法も開発した。これらのことより、遺伝子組換えに必要な植物体の再生系が開発された。次に、不定胚による植物体再生系を利用してヒノキの遺伝子組換え体の作出方法について検討した。まず、パーティクルガンによりクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をヒノキなどの林木の細胞に導入した。GFP遺伝子が導入されたこれらの細胞は緑色蛍光を発することが確認されたので、GFP遺伝子は遺伝子組換えの成否を判定するレポーター遺伝子として利用できることが明らかとなった。続いて、GFP遺伝子とカナマイシン耐性遺伝子を保持させたアグロバクテリウムをヒノキのembryogenic issueに感染させた。その後、カナマイシンで選抜を行なったところGFPの緑色蛍光を発するembryogenic issueが得られた。これらから不定胚分化を経て遺伝子組換えヒノキを再生させることができた。これらのことより、ヒノキの遺伝子組換え系が開発された。この系を我が国の林木の遺伝子組換えのモデルと考えることができる。以上本研究で得られた知見は、病虫害抵抗性や雄花形成抑制などの実用形質に関与する遺伝子を林木へ導入することにより新たな林木品種を創出する「遺伝子組換え育種」に寄与する。
収録刊行物
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- 林木育種センター研究報告
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林木育種センター研究報告 (23), 63-119, 2007-02
日立 : 林木育種センター
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050564288650293760
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- NII論文ID
- 40015464132
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- NII書誌ID
- AN10413139
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- ISSN
- 09185828
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- NDL書誌ID
- 8808747
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- NDLサーチ
- CiNii Articles