馬介在療法の科学的効果 : 関西福祉科学大学での取り組みを中心に

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  • ウマ カイザイ リョウホウ ノ カガクテキ コウカ カンサイ フクシ カガク ダイガク デ ノ トリクミ オ チュウシン ニ

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抄録

馬介在療法の効果について検討し、以下の結果を得た。1. 学生48名を対象に精神作業負荷(コンピューター化クレッペリン試験)を2~3時間実施して精神疲労を誘発し、その後20分間の乗馬に伴う疲労回復効果をクロオスオーバー法にて検討したところ、疲労感、気分の落ち込み、意欲、イライラ感、緊張、不安、活力、体調の8項目の自覚症状は乗馬群がコントロール群と比較して統計学的に有意に回復していることが確認された(3元配置分散分析、 p<0.001)。2. 精神作業疲労を誘発した学生10名を対象に乗馬と歩行(有酸素運動)の回復効果の比較を行ったところ、疲労感、活力、緊張、意欲の4項目は歩行だけでも有意な改善がみられたが(p<0.05)、気分の落ち込み、イライラ、不安、体調の悪化などの症状については有酸素運動だけでは改善がみられず、乗馬でのみ有意な回復効果がみられた(p<0.05)。3. 断眠により疲労を誘発した学生15名を対象に回復効果を検討したところ、コントロール群(n=8)は全く変化が見られなかったが、乗馬群(n=7)では乗馬直後に疲労感、イライラ感、気分の落ち込みが有意に改善(p<0.05)、不安感、意欲において改善傾向がみられた(p<0.1)。しかし、精神作業に伴う疲労とは異なり、その後室内で休息していても2時間後には断眠後と変わらないレベルまで悪化した。4. 女性6名、男性5名の男女11名を対象に、安静時,歩行時ならびに常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)の騎乗時における心拍数、酸素消費量を計測したところ、常歩乗馬も有酸素運動になっていることや、速歩乗馬や駈歩乗馬は最大運動負荷に匹敵するような激しい運動であることが判明した。5. 馬介在療法を希望した9名の不登校児と引きこもり状態の5名の成人(計14名)を対象として、馬介在療法(2.5時間/日×5週)を実施したところ、臨床症状評価で気分の落ち込み、イライラ感、不安感、緊張の項目において有意な改善が認められた(p<0.001)。また、臨床心理士による観察でも表情が明るく、柔らかくなっており、メンタルヘルスの向上がみられた。加速度脈波の周波数解析による自律神経系の評価では、LF/HF比が有意に低下し(p<0.05)、脈拍の揺らぎも有意に増加しており(p<0.001)、常歩騎乗は交感神経系の緊張を緩和し、自律神経系のバランスを改善させる効果があることが明らかになった。アクティグラフによる睡眠・覚醒リズム解析では日中の活動量が増えて、夜間睡眠時の中途覚醒が減っている傾向がみられた。

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