トマトの「紐」栽培における要水量と土壌養分の収支

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  • トマト ノ ヒモ サイバイ ニ オケル ヨウ スイリョウ ト ドジョウ ヨウブン ノ シュウシ

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抄録

「防根給水ひも」栽培装置を用い,秋冬期の中玉トマト7段摘心栽培において要水量と肥効調節型肥料の施肥効率を求めた。株当たりの基本培地量は3Lで,畑土:バーク:ピートモス:パーライト=2:4:1:1の混合土とした。初期の生育を制御するため定植時から第5段花房開花時まで半量1.5Lで栽培し,その後1.5L拡張の(1.5+1.5)L区と終始3L区を設けて比較検討した。定植後1か月間は生育に培地量の影響は見られなかった。その後,生育に変化がみられ摘心部新鮮重ならびに栽培終了時の茎径は3L区の方が優れた。全乾物重は(1.5+1.5)L区で株当たり304g,3L区で355gとなり3L区で有意に高かったが,水利用効率はいずれも乾物生産で6.1g/Lとなった。可販果収量は(1.5+1.5)L区で株当たり2.1kg,3L区で2.4kg,果実糖度は(1.5+1.5)L区で若干高くなり,両区とも第1段果房こそ7%に達しなかったものの,第2段以降は安定して7%以上の果実が収穫できた。果実酸度は処理区間に大きな違いはなく,上位果房になるほど低下する傾向にあった。T-Nは株当たり11g,P2O5は4.6~5.2g,K2Oは12~13g減少し,T-NおよびK2Oについては施肥量を超える養分が土壌から収奪された。養分減少量を施肥量で除した見かけの利用率はT-Nにおいて125~132%となり,その他の養分においても軒並み100%以上となった。吸水量はその日の気象状況に大きく影響され,吸水量が最大となったのは両区とも11月上旬で,株当たりの日吸水量は(1.5+1.5)L区で720ml,3L区で880mlであった。培地の表層と紐表面からの蒸発量(約1.8L)を除いた株当たりの総吸水量は(1.5+1.5)L区で48.2L,3L区で56.7Lと計算された。以上の結果より,本手法において若干の水損失を考慮して60Lの水を確保できれば,培地量3Lで秋冬季の‘レッドオーレ’7段栽培が可能であることが明らかとなった。この場合,1Lの水で42gの中玉果実1個を生産できることになる。

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