樹木播植方法

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抄録

琉球王朝時代の林政改革は1730年代~50年代にかけて、蔡温らの主導で進められ、この時期に林野の管理区分、森林関連法の整備、林業技術の普及・啓発が行われている。「樹木播植方法」は、この様な時期に公布されたもので、その特徴は大きく分けて4つある。1つは有用樹種の育林方法である。主な樹種はスギ、シナアブラギリ、リュウキュウマツ、オキナワウラジロガシ、イタジイ、イスノキ、イヌマキ、イジュ、モッコクなどである。スギ苗の養成には、挿し木 (直挿し造林用) と実生 (苗床で育てる)の2つがある。スギ苗を植え付ける場所は、抱護が揃い、土地が広く深い所がよい。シナアブラギリは林地に直播きする。数年後、実付を多くするため、梢の芽を摘む。リュウキュウマツの造林は林地に直播きで行う。オキナワウラジロガシ・イタジイ・イスノキなどは林地に直播きする。イヌマキ・モッコク・イジュなどは苗床で実生苗を育てから林地に植えつける。2つは竹林の育て方である。衰退した竹林は、一定間隔に切り開き、根髭を掘り取り、再生させる。竹の利用年を考えて、毎年、幹に印を付けて年齢を判別する。3つは荒廃した原野の育林法である。ススキの原野では、ススキの高さの約5倍の広さに開き、そこを整地して、樹木を植え付ける。この5倍の数値は、現在の防風理論の最大防風効果距離と一致する。開地した場所の景観が魚の鱗状に見えることから、これを「魚鱗形」と称している。この育林法は、中国由来の風水思想の気の理論を応用したもので、他の地域では見られない琉球独自の技術である。4つはこれらの育林技術の中で、重要なキーワードとして「抱護」の概念があげられる。「抱護」は風による気の散逸を防ぐ方法である。そのために地形を利用し、地形に欠陥がある場合には、植林の手法で「抱護」の環境を補正する。これは島嶼環境下における風害への対処法として、琉球で独自に発展したものと考えられる。以上ことから、18世紀の30年代から50年代には、すでに琉球の自然環境に適応した独自の育林技術が確立されていたことがわかる。

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