福岡県産スギ品種の特性

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  • フクオカケンサン スギ ヒンシュ ノ トクセイ

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抄録

本研究では,福岡県産スギ品種のさまざな特性を調べた。花粉症対策の一環として,6~8年生時の春期に39品種の雄花着花量を調査した。3年間まったく着花しなかった品種はアカバ,アヤスギなど20品種あった。初期成長を調べるため,植栽1年後から12年後までの樹高を経時的に調べた。5品種のうちヤマグチが最も成長が早く,ホンスギは最も遅かった。立木に取り付ける携帯型の応力波伝搬時間測定装置FAKOPPを用い,強度を簡便に評価できるか検討した。応力波伝搬速度はヤング率と有意に高い正の相関があることが認められた。そこで20年生の30品種の伝搬速度を調べたところ,最も遅かったのは2080m/sのヤブクグリで,最も速かったのは2969m/sのリュウスギであった。乾操性の指標として,20年生の29品種の心材含水率を調べた。最も値が低かったのは81%のアヤスギで,最も高かったのは208%のウラセバルであった。さらに木材エンドユーザーの望む品種を探索できるよう,累計797名の県民に木材の嫌いな点および改善すべき点をアンケートした。最も多い回答は「シロアリに弱い」で,次が「腐りやすい」であった。これに基づき,シロアリに曝露した試験体の質量減少率や心材木粉中でシロアリを飼育した際の死虫率を調べ,各品種の耐蟻性と殺蟻性を評価した。質量減少率で評価した耐蟻性については品種間差は認められなかった。一方,殺蟻性については,アカバが産地を変えてもイエシロアリやヤマトシロアリに対して高い活性があった。イワオスギ,リュウスギもイエシロアリに対する殺蟻性は高かった。「腐りにくさ」の指標としてオオウズラタケに曝露した場合の試験体の質量減少率を調べた。減少率は対照のブナに比べて,おおむねどの品種も有意に低かったが,品種間差は小さいことがわかった。総合的にみて,リュウスギは雄花着花性は低く,強度は高く,心材含水率も低く,殺蟻性も持ち合わせた有望な品種と考えられた。

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