日本西南海区に来游するカツオの移動および成長について

抄録

(1)西南海区のカツオの体長組成(1951年から'53年までの3ヶ年)から移動と成長を考察した。(2)西南海区には、魚体の大きさからはっきりと区別される2つのグループが存在する。その一つは春から秋にかけて主として列島線に滞泳する瀬付性のカツオであって4年魚と3年魚から成り、他の一つは夏から秋にかけて黒潮と大陸沿岸水との潮境から五島灘にかけて回遊する回遊性のカツオであって3年魚と2年魚から成る。前者を列島グループ、後者を五島グループと名ずける。(3)列島グループの移動を年令群毎に述べると、1. 4年魚は1・2月に魚釣島近海に現れ、2・3月にトカラに達する。4月頃から南下して5月以降は久米島附近と先島群島南側附近とに滞泳して産卵し、9月頃産卵を終って10月から南退する。2. 3年魚は1月に先島群島の南に出現し、2月頃から北上して久米島周辺とトカラ水域に達する。それから10月迄全域にわたって滞泳する。(4)列島グループは夏に成熟するグループであり、このために夏の成長はよくない。(5)五島グループの移動を年令毎に述べると、1. 3年魚は7月頃黒潮と大陸沿岸水との潮境域に現れ、8・9月に五島灘に達する。10月頃から南退して11月にはトカラ水域に現れ、12月に南下する。2. 2年魚については出現期間が短いのでよく分からないが、3年魚の場合と大差ないものと考えてよいだろう。(6)五島グループは冬に成熟するグループであり、従って索餌回游であり成長は非常によい。(7)冬のルソン海峡の体長組成は五島グループとつながる。五島グループは冬には瀬付性でこの水域で産卵し、列島グループは冬には回游性ではなかろうかと想像される。

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