ポストTPPの酪農経営戦略

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  • ポスト TPP ノ ラクノウ ケイエイ センリャク

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抄録

酪農が供給する生乳から製造する乳製品は必須栄養素の蛋白質や脂質の主要な供給源となっている。そして,乳製品原料を供給する酪農は国内での持続可能な自給産業である。食料を海外に依存するわが国では酪農は食糧安全保障の観点から重要な素材産業であると言える。主要先進国では,乳製品は食生活に必須であるため保護すべき産業である。一方,わが国では,乳製品消費は順調に拡大し重要性を増しているが,代替する蛋白質や脂質の供給源に大豆や魚製品があり,食糧としての重要性が主要先進国ほど明確でなく保護する理由を欠いている。わが国の酪農経営体は保護が明確な主要先進国以上に厚遇され安定した収益環境にある。一方で,政策諸制度・農業生産財の国際的寡占化・サプライチェーンの相互依存性が高コストを構造化しており,酪農経営体の一般的なコスト削減方法である増頭による規模の経済性を活かすことができず,多様多義な業務活動・未熟な管理能力などが低い生産性を誘発し,結果的に低い収益性を生み出している。加えて,投資の装置産業的性格と資金調達の単一性から過剰負債を招き,経営を不安定化させている。この改善には,酪農固有の多様な業務活動を生乳生産(搾乳)に特化して、現有経営資源を集中し,その他の業務活動は外部経営資源を活用することで生産性向上を図り,その上で増頭による規模の経済性を追求することである。この過程が乳製品向け乳価で十分利益が獲得できる経営と国際的に妥当な生産コストを実現する。この外部経営資源の活かし方がポストTPP(環太平洋戦略的経済連携協定後)の経営戦略の方向性を決める。それは外部経営資源を地域に求める選択と成長に伴い必要な資源を内製化する選択である。筆者は好ましい経営戦略に成長とともに必要な経営資源を内製化する選択肢を推奨する。

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