ナシのハダニ類の薬剤抵抗性と種類別感受性差異について

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  • ナシ ノ ハダニルイ ノ ヤクザイ テイコウセイ ト シュルイ ベツ カンジュセイ サイ ニ ツイテ

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説明

1. 千葉県下のナシに寄生するハダニ類の優占種は近年変ってくる傾向がみられ,夏にはこれまでのオウトウハダニに代ってカンザワハダニ,ナミハダニの優占する場合がある。特にカンザワハダニの発生は1964~'67年の7~8月に1部地帯に多発生し,その原因は薬剤感受性の低下も一つの要因と思われた。2. 千葉県下の優占種であるオウトウハダニについて過去5~10年間使用されてきたメチルジメトンに対する感受性を水耕法によって検定したところ,系統別の感受性の差が認められ,LC50の最高は約30倍,LC95では20倍以上の開きがあった。感受性の低下は他の有機リン剤,特に散布回数がいずれの系統でものべ40回以上に達しているパラチオンの影響を受けていると思われるが,交差抵抗性か否か明らかでない。メチルジメトンを過去5年間にのべ15回以上使用したところでは,LC50が5ppm,LC95が100ppm以上を示し,実用場面での効果の減退が感ぜられるが長年の優占種であるにもかかわらず,全般に他のハダニ類にくらべると感受性は強く,ハダニの種類による感受性低下の遅速があるものと推察された。3. 感受性の年次変化についてオウトウハダニで検定したところ,1964年の検定開始後各系統とも感受性の減退が認められ,特に1964年以来メチルジメトンを継続散布している地帯での減退が顕著であった。また季節的変化では越冬世代の感受性が強く,盛夏期との差はLC50で10倍以上になる系統もみられた。カンザワハダニのメチルジメトンに対する感受性は系統差が大きいが,全般にオウトウハダニにくらべ感受性は低く,LC50の最高は132.5ppmを示し,LC95ではほとんどの系統が200ppm以上であった。ナミハダニでは一系統のみの検定で1964年の検定開始後LC50は40~80ppmの範囲にあり,感受性はオウトウハダニにくらべ低く,カンザワハダニの多くの系統より高かった。ミカンハダニはすべての系統で感受性が強く,系統別の感受性の差は認められても,供試濃度範囲では回帰線が求められなかったがLC50はいずれも5ppm以下であった。4. オウトウハダニ,ナミハダニ,カンザワハダニのメチルジメトンに対する感受性の最も低い系統について各種の殺ダニ剤を用いて水耕,散布の方法により,検定をおこなったところ,各種ハダニとも有機リン剤の効果が低く,特にカンザワハダニは多くの有機リン剤の効果が認められず,強い交差抵抗性を示した。また他系統の多くの薬剤を含めた感受性でもミカンハダニ>オウトウハダニ>ナミハダニ>カンザワハダニの順に感受性が高く,カンザワハダニは単なる交差,複合抵抗性ではないと思われた。5. カンザワハダニの抵抗性の発達速度についてメチルジメトンの連続散布をおこなったところ,2~3回散布後から感受性の低下が顕著で,のべ7回散布後には処理前にくらべLC50では約20倍,LC95では50倍に達した。したがって本種の越冬がナシ園で完全におこなわれ,抵抗性系統が維持されるならば,各種の殺ダニ剤の効果が著しく低下する懸念がある。

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