施設栽培における適環境条件の生理的研究(1) : キュウリの栽培温度の解析

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  • シセツ サイバイ ニ オケル テキカンキョウ ジョウケン ノ セイリテキ ケンキュウ 1 キュウリ ノ サイバイ オンド ノ カイセキ

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抄録

1 本試験は施設栽培における適環境条件を生理的に解明するためにキュウリを供試してその要求温度を乾物生産から解析し,実際栽培において実証した。2 夜温の異なるキュウリ葉の消費乾物量を転流と呼吸とに分離し,それらの経時変化をみた。夜温別の転流終了までの時間は20℃ではほぼ2時間,16℃ではほぼ4時間,13℃ではほぼ6時間でその乾物は5.0~5.5gでありそれ以上の消費乾物量は呼吸によるもので,高夜温ほど多かった。10℃では他区の転流量の半分程度で,呼吸による消費量はきわめて少なかった。キュウリ葉からの転流が適温下では比較的早期に終了することからキュウリの栽培夜温を転流の温度と呼吸消耗の抑制の温度とに分離した。その条件下で実際栽培することにより確認した。3 転流温度の処理時間を4時間一率にし,品種別(さつきみどり・ふたば・夏埼落3号)の適処理温度を実際栽培条件下でみた。日中の乾物増加量は8~10葉展開期ではふたばが最も多く,さつきみどり・夏埼落3号はふたばの半分程度で,近似した傾向を示したが,いずれの品種も転流促進温度を加えすことにより増加し,生育も同様の傾向を示した。その処理適温度は16℃,ふたばではそれよりやや低めであろうと思われた。15~18葉展開期では品種や温度のこれらの傾向が逆にあらわれたことから,キュウリが生育するにつれ,転流促進温度をやや低下させる必要があった。収量についてはさつきみどりは16℃,ふたばは13℃,夏埼落3号は16~13℃の転流促進温度を加えた区が最も多収であった。いずれの品種も従来の栽培目標温度である13℃恒温より約25~30%増収になった。4 転流促進温度を16℃,呼吸消耗の抑制温度を10℃に設定した場合の適処理時間は転流と呼吸に最も関連深い根重および乾物重が4時間区で最もまさり,乾物増加量も多かったところから,4時間が適当であろうと思われた。5 夜温の転流促進のため温度処理の時刻は前夜半でも後夜半でも大差なく,同積算温度の恒温処理よりもまさった。6 キュウリの生育のための昼温の要求温度は日中の同化と転流を促進し,呼吸消耗を抑制したい。それらの盛期が時期的にずれることから,昼温の変温処理効果をみた。日中の積算温度200℃の中で午前中30℃,午後20℃区が他の処理区より生育・根重・乾物重などまさり,T/R率は低くかった。一方,乾物増加量は最も少なかったことから,日中でも相当量転流し,呼吸消耗の抑制効果の高いことを示唆するものと思われた。7 以上の結果から,暖房や換気によるキュウリの温度管理の栽培温度を下図のように確認した。

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