日本系サケの遺伝的個体群構造

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タイトル別名
  • Genetic structure of chum salmon populations in Japan
  • ニホンケイ サケ ノ イデンテキ コタイグン コウゾウ

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抄録

日本系サケ(Oncorhynchus keta)個体群の遺伝構造を明らかにするために,アロザイム20遺伝子座を用いて日本系サケ35河川個体群(2,447個体)を分析した。各個体群のアレリックリッチネスおよびヘテロ接合度の観察値と期待値の平均をそれぞれ計算し,その遺伝的変異性を調べるとともに,近隣結合法による系統樹の作成,分子分散分析による地理的階層性の推定,pairwise F STによる遺伝的分化の推定等を行った。また過去に行われた日本系サケのマイクロサテライト分析で示された遺伝子頻度データを使用し,各個体群でのアリル数の平均,有効対立遺伝子数の平均,およびヘテロ接合度の期待値の平均をそれぞれ求めるとともに,日本系サケのマイクロサテライト分析の既存データである系統樹およびpairwise F STを引用して,アロザイム分析の結果と比較した。その結果,日本系サケの遺伝的変異性は,アロザイム分析では本州地域で高い値を示したが,マイクロサテライト分析では北海道地域の方が高い値を示した。一方,アロザイム分析のデータから,日本系サケの遺伝的個体群構造は北海道5地域(オホーツク,北海道日本海,根室,えりも以東,えりも以西),本州2地域(本州太平洋,本州日本海)の7地域個体群に分かれること,これらの地域個体群間では遺伝的分化が生じており,特に北海道地域と本州地域で大きいことなどが明らかとなり,マイクロサテライト分析による結果と一致した。以上のことより,日本系サケ個体群では過去120年以上にわたりふ化放流事業をおこなっているものの,その基本的な遺伝的枠組みは維持されているものと推察された。

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