ふゆみずたんぼが鳥類の保全に及ぼす効果

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  • フユミズタンボ ガ チョウルイ ノ ホゼン ニ オヨボス コウカ

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抄録

冬期湛水水田(以下「ふゆみずたんぼ」と呼ぶ)が水鳥の生息環境の保全に果たす機能の検証を,冬期に飛来するガン類を中心に行った。2005/06年と2006/07年の2越冬期にガン類を対象に,集団で冬期湛水が行われている伸萠地区水田(宮城県大崎市田尻蕪栗地区)で,詳細分布と行動調査を行った。その際にガン類が利用した水田の農法の記録も行った。また今回の調査に先立ち,1998/99年及び1999/2000年の越冬期に実施した調査データも参考にした。2005/06年は寒波のためにふゆみずたんぼが長期間凍結し,水鳥のふゆみずたんぼの利用頻度が低く,十分なデータを取ることできなかったが,2006/07年は,極端な暖冬で,ふゆみずたんぼが凍結せず,ガン類の利用頻度も高かった。ガン類は午前中は乾田や湿田を利用し,昼前後にふゆみずたんぼに集中し,その後再び,乾田や湿田へ分散することが多かった。また行動面では,乾田や湿田で主に採食し,ふゆみずたんぼでは休息,羽づくろい,水浴びなどが多く,ここを擬似湖沼として利用していることが明らかになったが,これらの結果は,99/00年の結果とよく一致した。一方,冬期湛水の効果が翌年の夏に水鳥に及ぼす効果を検証するために,夏に渡来する動物食の代表種であるサギ類を対象として,ふゆみずたんぼが夏のサギ類に及ぼす保全機能の検証を行った。サギ類はふゆみずたんぼを選択的に利用した。その程度は種により異なるが,サギ類全種のふゆみずたんぼでの2年間の平均生息密度は,群れで行動し密度の変動が大きいアマサギを除くと,ふゆみずたんぼ以外の水田の2.7倍あり,アマサギを含めると4.4倍となった。また個体数も多く,水田環境への依存性が高いダイサギは,3.8倍,チュウサギは,3.5倍と他のサギ類に比し,安定して高かった。これらの結果から,ふゆみずたんぼは冬期のみならず,夏期の水田環境に依存する水鳥のサギ種群への保全機能も高いことが示された。

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