持続的伸張刺激と周期的伸張刺激がラットの除神経筋萎縮に及ぼす影響

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抄録

【はじめに】理学療法の現場で、廃用性筋萎縮の抑制のために筋力増強訓練、ストレッチなどの機械刺激が処方されることがある。これらの方法は経験的に実施されていることが多く、その方法による効果については十分検討されていない。そこでラットを用い坐骨神経の除神経によるヒラメ筋萎縮に対して持続的伸張刺激又は周期的伸張刺激を加え、その有効性について検討した。【対象と方法】8週齢のWistar 系雄性ラット50匹を対照群10匹、除神経群10匹、除神経+持続的伸張刺激群(以下、持続伸張群)15匹、除神経+周期的伸張刺激群(以下、周期伸張群)15匹に分けた。除神経群と持続伸張群と周期伸張群には麻酔下にて左坐骨神経を約2 cm程度切除し、対照群には皮膚と筋を切開し坐骨神経を露出させ、そのまま縫合を行った。持続伸張群は麻酔下にて足関節背屈位固定を30分行い、周期伸張群は麻酔下にて足関節の他動的背屈運動(足関節最大背屈位で5秒間保持-足関節中間位5秒間保持)を15分間繰り返した。これらを1日1回、週5日、2週間施した。術後2週間で麻酔下にて左のヒラメ筋を剖出し筋湿重量を測定した後、筋を長軸方向に二分し、一方は組織学的分析に、他方は生化学的分析に用いた。組織学的分析は筋の横断凍結切片を作製し、H-E 染色を行った後、筋線維断面積を測定した。生化学的分析は筋タンパク抽出後、電気泳動を行い銀染色を施し、各ミオシン重鎖(MHC)アイソフォームの割合の変化を調べた。 【結果】筋湿重量は、除神経群(0.21±0.02 mg/kg)、持続伸張群(0.25±0.04 mg/kg)、周期的伸張群(0.24±0.02mg/kg)の3群とも対照群(0.39±0.03 mg/kg)に対して有意に小さかった(P < 0.001)。しかし持続伸張群、周期伸張群は除神経群に対し有意に大きく(P < 0.01)、筋湿重量の減少が抑えられていた。筋線維断面積では、除神経群(801±193 μm2)、持続伸張群(1185±158 μm2)、周期伸張群(1000±172 μm2)の3群とも対照群(2329±333 μm2)に対して有意に小さかった(P < 0.01)。しかし、持続伸張群、周期伸張群は除神経群に対し有意に大きく(P < 0.05)、筋線維断面積の減少が抑えられていた。MHCアイソフォームのタンパク量比は、速筋型であるtype IIaの割合が除神経群(38±8 %)は対照群(26±11%)に対して有意に大きかった(P<0.01)。持続伸張群(31±11 %)、周期的伸張群(30±11 %)では対照群に対して有意な差は見られなかった。【まとめ】本結果でも明らかになったように、一般にヒラメ筋のような遅筋では除神経を行うと筋質重量、筋線維断面積は減少しMHCの速筋化が起こる。持続的伸張刺激や周期的伸張刺激を行うと筋湿重量、筋線維断面積の減少は抑えられ、除神経による筋萎縮の進行を抑制する効果がみとめられた。また、MHCの速筋化も抑制される傾向がみられた。

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