日本と中国との環境教育の比較

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  • A Comparison of Environment Education between Japan and China

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日本の環境教育は,1970年代に「公害教育」として始まった。日本において,1950~1960年代に工場などからの排出物が人的被害を発生させた。この被害は,「公害」と呼ばれ,公害問題として注目された。従って,初期の環境教育は,1970年代に行われた公害裁判の進行を伝えるメディアのニュースを活用した。当時,生徒達は,リアルタイムに環境問題を考える状況にあった。今日の日本の環境教育は,既存の教科の中で行っている。その内容は「環境教育指導資料」で規定されている。環境教育指導資料は,1991年に出された「中学校・高等学校編」,1992年の「小学校編」,1995年の「事例編」からなる。最初に出版された中学校・高等学校編では,環境保全の必要性と環境問題を定義し,環境教育の意義と役割を述べている。1992年に出版された小学校編は,小学校における環境教育のねらい,その進め方・考え方,留意点が述べられている。1995年に出版された事例編は,環境教育に関する教育委員会の施策を示し,また,豊かな学校環境づくりの具体例を示している。環境教育の具体的な教材に関する研究例,僅かな汚染による環境問題を取り上げた例として,藤崎・八田(1998),八田(2000)を紹介した。中国の環境教育は,「第1回全国環境教育会議(1992年)」から始まる。1990年代の中国の小学校は,主として「自然」という教科の中で環境教育を行った。1993年から義務教育のカリキュラムに環境教育が,独立教科として導入された。中国では,急速に工業化した地域で大気や水の汚染が進む中で,学校関係者が環境教育の必要性を感じ活発に緑色学校を目指すようになった。環境政策・環境教育に関しては,2007年に大きく変化する。人事評価制度が改められ,幹部は成績を評価されるようになり,環境教育は進展した。しかし,地方レベルでは貧困地区で教師の大幅な不足,教育経費の不足,環境教育資源の不足で環境教育の実行が困難な状況である。農村の教師が環境教育に関する研修を受ける機会が少ないという問題点も残されている。中国の環境教育は,じわじわと大きなうねりとなってきている。筆者らも,日本は中国の環境教育に対し認識を新たにしなければいけないと思っている。

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