京都議定書の批准と家庭の二酸化炭素排出の現状と削減対策

書誌事項

タイトル別名
  • The Ratification of the Kyoto Protocol and Measures to Reduce Domestic Carbon Dioxide Emissions
  • キョウト ギテイショ ノ ヒジュン ト カテイ ノ ニサンカ タンソ ハイシュツ ノ ゲンジョウ ト サクゲン タイサク

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抄録

P(論文)

"京都議定書は、2005年2月に発効した。これは、世界初の気候変動枠組条約である。人間活動によって、これ以上の気候変動の悪化をもたらさないための、法的拘束力のある国際条約である。具体的には、温室効果ガスの削減による地球温暖化対策を主なるテーマとしている。その内容は、人類の最大の課題である自然と経済との調和と言う大きな課題を含んでいる。80年代前半までは経済を成長させ、経済的に豊かになることに疑問を持つ人は少なかった。すでに72年に『成長の限界』が、ローマクラブによって、これ以上の経済成長には、限界があると示していたにもかかわらず、エネルギーの消費拡大と排ガスの増加は続いてきた。この根底には、人々の飽くなき経済的欲望が流れているからであろう。それを物的に可能にしたものは、化石燃料と鉱物資源の大量消費であった。しかし、経済成長のために、それらを消費すると温室効果ガス、特に二酸化炭素(以下CO_2と記す)が排出される。それは、消費した国のみならず大気中を通じて世界に排出される。つまりグローバルな影響が出る、と言うことである。温室効果ガスを大量に出しているのは、アメリカ、日本、EU諸国、カナダ、ロシアと言った経済大国と最近では中国、インドと言った国々である。他方、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカ諸国は、僅かな排出量である。数カ国の工業国によって生み出された排ガスによって地球の温暖化、異常気象、酸性雨、大気汚染等が生じた。その結果、海面の上昇による国土の水没、陸地の浸食、森林の枯死、砂漠化等の被害を世界中が受けることになった。これは、市場の失敗でもあり市場メカニズムに立脚した伝統的経済学の限界とも言えよう。つまり既存の経済学は、古典派以来、自然は無料であると言う前提がある。しかし、大気は、自然そのものであるが、それを経済活動により汚染することは、経済学の範疇を超え生物の生存の根本にかかわっていたのである。更に、経済学は資源が枯渇するまでの時間を尺度に入れてこなかった。石油が消尽されるのは、約40年、石炭は約277年と予測されている。この有限な資源を消尽しながら経済成長を計画してきた。誰しも、経済学の原理に基づいて化石燃料を買いそれを使用する。ある人、ある国はそれを大量に消費する。それが、人類の存亡に関わるとは、認識できなかった。これは、既存の経済学が見落とし、市場が評価できなかったものである。議定書の発効は、国際政治の力によって、これらに歯止めをかけることになった。それは今までの経済成長に重きを置いた価値観を180度変えることにもなる。今までのような成長政策ならば、多くの国が賛成する。その反対の政策を実現し欲望に出口(排ガス)から制限を加えようとするものである。当然、入口(特に石油)にも消費制限が懸かってくる。故に、その実行は困難を極めるであろう。しかし、これが実現できるか否かに人類の将来が、懸かっているといって過言でない。2004年の我が国は、12億7900万tのCO_2を排出している。年間約526兆円(実質)のGDPを生み出すために、大量の化石燃料を消費した結果である。本研究においては、近年、CO_2が急増している家庭の調査をした。家庭に於ける168百万tに上るCO_2が、どのような部分から排出されているのか、84戸の聞き取り調査をした。その結果、自家用車によるガソリンの消費によるCO_2の排出が、3人家族平均で1ケ月約175kgに及ぶことが判明した。これは、電気、ガス、水道の必需品よりも大きい。調査の中でガソリンを最高に消費した家庭は1ヶ月290lでありCO_2は、1, 855kg排出したことになる。エコネット情報の試算によるとガソリン1lを消費すると牛乳1l入りパック1, 150本分のCO_2を排出すると言う。この家庭では、333, 500本分を大気中に排出していることになる。このように経済が豊かになり、便利な生活ができる裏には、有限な資源を消尽し生存環境を汚染、破壊しながら進行してきたと言うマイナスもあった。あたかも、それは蛸が自分の足を食べながら太ろうしているかのようである。経済大国は、地球の資源を食べて太ってきたのであり、その汚物を世界に捨ててきた。しかし、このような経済、社会のあり方が根本的に是正される内容を含むのが、京都議定書(以下、議定書と記す)である。それは、消費の末端にある家庭の消費生活の再検討から始まるであろう。"

収録刊行物

  • 嘉悦大学研究論集

    嘉悦大学研究論集 49 (2), 1-30, 2006-11-30

    小平 : 嘉悦大学研究論集編集委員会

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