ジャック・デリダ没後10 年 デリダとランシエールにおける民主主義と他者の問い

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  • La démocratie et la question de l’autre chez Derrida et Rancière

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ジャック・デリダは、その後期思想において「来たるべきデモクラシー」の概念を展開した。ジャック・ランシエールは二つのデリダ論のなかでこの概念を扱っている。ランシエールによれば、デリダのデモクラシーは「デモスなきデモクラシー」であり、デリダは政治的主体の重要性を捉えていないことになる。本稿はこうした理解の妥当性を批判的に検討する。まず、ランシエールは政治の倫理化として現代の政治や美学における「倫理的転回」を批判し、デリダ思想にも同様の動向を認めるが、われわれはデリダにそうした「転回」はなく、あるのは「回転」運動としての差延の思想であることを確認する。デリダによればデモクラシーも差延の運動にもとづくものである。次に、ランシエールはデリダの「正義」の議論を絶対的他者からの他律的命令に対する主体の服従と捉えるが、われわれはデリダ思想において描かれるのは、主体の自律的決定のなかに入り込む他律的契機の不可避性であることを明らかにする。

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