楊惲伝にみえる『漢書』の筆法

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  • ヨウウンデン ニ ミエル 『 カンショ 』 ノ ヒッポウ

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抄録

『漢書』巻66公孫劉田王楊蔡陳鄭伝にある楊惲伝をとりあげる。楊惲伝はその父・楊敞の附伝として位置づけられている。『漢書』が勅選であるところから、王朝や皇帝を批判する書き方はなされていないという考えが多い。しかし、班固が何事をも直書する点は批判的要素をふくむとする説もある。この観点から楊惲伝を検討した。楊惲の名前は巻66の論賛にも叙伝(巻100下)にも記載されていないし、短評もない。にもかかわらず、楊惲伝の紙幅が巻66全体の三分の一を占め、さらには伝の本文に、楊惲が時の皇帝・宣帝を桀紂に比する内容を含み、読者側からは、楊惲の欠点を暴くとも、王朝の政治方針に対する批判とも受けとれる。読者の立場のちがいを想定し、それぞれの異なる立場に結論をゆだねる書き方がなされている。ここに、『漢書』の筆法がみられる。

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