骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)のカルモジュリン依存性Ca-ATPase活性の性質

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  • Properties of calmodulin-dependent Ca-ATPase activity of a clonal osteoblastic cell (MC3T3-E1)

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抄録

形態学的な研究から,硬組織形成部位にアルカリ性至適pHのCa-ATPaseの存在が示唆されているが酵素学的な性質の報告は少ない.そこで骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞が保持するCa-ATPase活性に関して研究を行った.細胞を石灰化時期まで培養後回収し,超音波破砕後に遠心分離操作を行って膜分画を得た.ATP加水分解により生じた無機リン酸をChifflet法で定量してATPase活性を測定し,以下の結果を得た.1.膜分画にはカルシウム(Ca)あるいはマグネシウム(Mg)により活性化されるATPaseが存在し両酵素ともthapsigarginによって阻害された.Ca存在下のATPase活性はMgによって拮抗されることと,Mg-ATPaseを阻害するazideによって阻害されないことから両酵素は別の酵素と示唆された.2.Ca-ATPase活性はCa濃度依存性に増加して1 mMの遊離Ca濃度で飽和し,50 %活性化濃度は0.3 mMであった.3.活性はpH依存性に増加し,pH 9.1でpH 7.5のほぼ3倍の活性を示して最大となりpH 10.0までは同程度の活性を示した.4.活性はATP加水分解の過程においてリン酸化酵素を形成するP型ATPaseの阻害薬であるvanadateとエタクリン酸によっては阻害されなかった.5.活性は2価金属イオンのキレーターであるEGTAおよびEDTAにより濃度依存性に阻害されたが,ビスホスホネートによっては阻害されなかった.6.遊離Ca濃度100 nMでは, Ca-ATPase活性はほぼ検出されないが,カルモジュリンを添加すると濃度に依存して活性は増大し,50 %活性化濃度は約6 μMであった.7.カルモジュリン非添加における活性は,カルモジュリン拮抗薬であるW7によって濃度依存性に抑制され,50 %阻害濃度は0.3 mMであった.以上の結果は,E1細胞にはアルカリ性至適pHのP型ではないカルモジュリン依存性Ca-ATPaseが存在することを示唆する.本酵素は,形態学的に存在が示唆されるCa-ATPaseと類似しており,硬組織形成に関与する可能性がある.

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