日本初の国立重度知的障害児施設,秩父学園誕生の背景――ニーズ分析と入園事例の検討を中心に――

書誌事項

タイトル別名
  • Background of Establishment of Chichibugakuen which is the First National Facility for Children with Severe Mental Retardation in Japan : Analysis of Social Welfare Needsand Case Study of Entrance Facility
  • ニホン ハツ ノ コクリツジュウド チテキ ショウガイジ シセツ,チチブ ガクエン タンジョウ ノ ハイケイ : ニーズ ブンセキ ト ニュウエン ジレイ ノ ケントウ オ チュウシン ニ

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抄録

1958(昭和 33)年 6 月に誕生した秩父学園は,日本初の国立重度知的障害児施設として画期的な実践を行ってきており注目される。しかし,従来の先行研究では,その社会的背景や創設経緯が必ずしも明確にされてこなかった。そこで,本稿では,国会会議録検索システム,地元新聞紙,地方広報誌,雑誌(『手をつなぐ親たち』)などを用い,1950 年代を中心とした知的障害児を取り巻く環境や社会情勢を明らかにした。加えて,そうした福祉ニーズへの呼応として,実際にわが子を秩父学園に入園させ,その後,変化・成長の兆しを紙上で語った数少ない事例の一つである和久井千代の言説にも着目した。知的障害児福祉ニーズの形成から,知的障害児研究,秩父学園創設という一連の流れのなかでの知的障害児及びその親や,関係者たちの実践・思考がいかなるものであったのかを明らかにした。但しその反面,それらは氷山の一角であり,受け入れ対象外となった多くの子どもたちや成人後・親亡き後の障害者の生活保障のあり方を問う一つの契機ともなっていた。  本稿の研究成果を手がかりにし,同学園初代園長の菅 修の思想,同学園のこれまでの実践的効果,同学園と他施設との連携などについて明らかにすることが今後の課題である。

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