幹の傾斜角度の違いがカツラ引張あて材の組織学的・化学的特徴に及ぼす影響

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  • Effects of different inclination angle of stems on anatomical and chemical characteristics of tension wood in Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.

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本研究では、幹の傾斜角度の違いが引張あて材の表面解放ひずみ、組織学的・化学的特徴に及ぼす影響を明らかにするために、カツラ(Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.)苗木の幹を異なる傾斜角度(0、30、50および70°)で固定して生育し、あて材形成を促した。表面解放ひずみは、いずれの傾斜角度の個体においても、0°に固定して生育した個体(正常材)と比較して、大きい負の値を示した。また、いずれの角度で傾斜した個体においても、傾斜上側への偏心成長が認められ、偏心率は、傾斜角度が増加するにつれて大きい値を示した。傾斜して生育したすべての個体の木繊維において、ゼラチン(G)層の形成とS3層の欠如が引張あて材部で認められた。また、引張あて材部では、傾斜角度30°における道管直径を除いて、道管直径と数の減少および木繊維壁孔孔口の角度の減少が認められた。さらに、正常材と比較すると、引張あて材において、リグニンおよびキシロース量が減少し、反対にグルコース、アラビノースおよびガラクトース量が増加する傾向が認められた。これらの組織学的・化学的特徴のほとんどは、幹の傾斜角度の増加とともに変化する傾向が認められた。一方、道管数、ミクロフィブリル傾角、リグニン量およびガラクトース量は、傾斜角度30°で変化し、その後、傾斜角度が増加しても値はほとんど同じであった。このことから、これら4つの形質は、カツラの傾斜した幹や枝を支持する際に重要な形質であると考えられる。

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