アクセラレータによるスタートアップ・コミュニティの構築:台湾のAppWorks(之初創投)の事例研究

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Abstract

本研究は、台湾のスタートアップ・アクセラレータ「AppWorks(之初創投)」の事例研究である。アクセラレータとは、毎期数ヵ月間程度の育成プログラムにより数組から数十組の起業チームを集中的に支援し、メンタリングによるビジネスモデルの改良・練り直し、(潜在的な)投資家やビジネスパートナーとのマッチング等を通して、比較的短期間でのスタートアップの事業化実現と成長促進を図る支援方式である。米国シリコンバレーの Y Combinator (2005 年創設)に始まり世界中に広まった。本研究で取り上げる AppWorks は、2010 年開始で台湾初の民間アクセラレータであり、卒業生起業家等によって構成されるコミュニティの規模ではアジア最大級とされる。その詳細な事例研究により、台湾・アジアの代表的アクセラレータの支援内容、運営体制、起業チームの特徴などの実情が理解される。加えて、AppWorks の特徴は、その明確な戦略性にある。 ビジネス領域ではインターネット産業/デジタルエコノミー、目指すべき市場としては大東南アジア経済圏(ASEAN+台湾、香港)にフォーカスする。また、アクセラレータの他に、独自のベンチャーキャピタル・ファンドを運営して、アクセラレータの運営資金を稼ぐとともに(アクセラレータ参加は無料)、アクセラレータ卒業生および他の有望なスタートアップに投資している。これを通して、相互扶助と「恩送り」のカルチャーを持つコミュニティを構築し、それを土台にスタートアップ・エコシステム(スタートアップの簇生、連携・ビジネスチャンス開拓、投資・資金供給)の発展を実現するという戦略ストーリーである。本研究では、これを詳細に解説し、これが見方によっては、デジタルエコノミー推進に向けた台湾政府の政策を先取り(もしくは具体化)したものであることを示す。そして、AppWorks の「スタートアップ・エコシステム戦略」は、GAFA や BATH のようなメジャーなプラットフォーマーを生み出し得ない(日本を含めた)中小国にとって注目すべき取り組みであると指摘する。

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