アイヌ語樺太方言における名詞複数接尾辞 : ahcinの用法

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タイトル別名
  • Plural Suffixes -ahcin in Sakhalin dialect of Ainu
  • アイヌゴ カラフト ホウゲン ニ オケル メイシ フクスウ セツビジ-ahcin ノ ヨウホウ

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抄録

アイヌ語樺太方言の名詞複数接尾辞には-ahcin と-utara の二つが認められる。-ahcin は名詞の所属形(人称形)のみに付加されるのに対し、-utara は名詞の概念形(人称接辞、所属接尾辞が付かない形)にも付加されるという点が異なっているが、両者の意味の差異につ いて詳細に検討したものはない。本稿では-ahcin の用例を分析した後、-utara と対照することで両者の意味について考察を加えた。調査の結果、普通名詞の所属形に付加された-ahcinは同質複数(additive plural)を表すことが明らかになった。また、名詞の所属形と同じ 形態である名詞化辞に-ahcin が付加された例もあることが分かったが、これも同じく同質複数と解釈できることを示した。次に同じく名詞複数接尾辞である-utara を調査し、-utaraが同質複数と近似複数(associative plural)の両方を表すことを確認した。-ahcin と異なり、-utara は固有名詞にも付加されるが、その際には近似複数の意味でのみ用いられる。さらに、-utara には複数の個人名の後に接続する例があるが、これは⽛例示的近似複数⽜(山越2003:141)である可能性を指摘した。

収録刊行物

  • 北方人文研究

    北方人文研究 13 1-19, 2020-03-25

    北海道大学大学院文学研究院北方研究教育センター

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