株枯病汚染土壌へ定植した後に自然発病したイチジク‘蓬莱柿’における外部および内部病徴の観察事例

書誌事項

タイトル別名
  • Observation of external and internal disease symptoms in the fig cultivar 'Houraishi' planted in soil contaminated with Ceratocystis ficicola
  • カブコビョウ オセン ドジョウ エ テイショク シタ アト ニ シゼン ハツビョウ シタ イチジク'ホウライガキ'ニ オケル ガイブ オヨビ ナイブビョウチョウ ノ カンサツ ジレイ

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説明

イチジク株枯病汚染圃場に定植した‘蓬莱柿’が,土壌伝染により自然発病した病徴発現の実態を記録した。本病の外部病徴の変化を同一樹で初期段階から連続的に観察した。新梢伸長の抑制が認め始められる頃には,地際部の主幹表皮に変色が観察された。この変色はしだいに主幹部の上部に広がり,その変色部に沿って窪みが形成され,葉の黄化やしおれ症状が認められるようになった。さらに樹体全身が萎凋して枯死に至ると,窪んだ部位に生じた亀裂が主幹部だけでなく主枝にも広がった。本病汚染圃場に定植した‘蓬莱柿’13本の外部病徴の変化を10年間調査した。定植2年目以降に枯死樹が発生し,その後5年目にかけて枯死樹数が増加した。樹体の枯死は7~8月に多く発生し,萎れから枯死までの期間が1か月程度で急性萎凋枯死する特徴が示された。本病汚染土壌に定植して防除対策を実施しない場合,10年後に約9割が枯死した。本病の内部病徴である木部褐変について,萎凋症状を発現した樹全体を解体調査した。木部褐変は,地際部位を中心に縦方向の上部は主枝部まで,下部は主幹と根部の分岐部まで拡大し,根部への広がりは少なかった。主幹部地際の木部横断面では,水平方向のほぼ全面に褐変が拡大した。土壌伝染による自然発病樹では地際部周辺の主幹部で,木部褐変の拡大に伴う通水阻害により萎凋症状が発現し,枯死に至ったと考えられた。樹体内の本菌の分布状況を調べた結果,萎凋樹のみならず萎凋症状を発現する前段の新梢伸長の抑制が認められる樹体においても,広い範囲から本菌が検出された。一方,枯死して乾燥が進んだ樹から本菌は検出されなかった。

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