平川祐弘作・宮城聰演出『夢幻能オセロー』におけるシテの言葉と声

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  • 中谷, 森
    京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • The Language and Voice of the Shite in Sukehiro Hirakawa and Satoshi Miyagi's Mugen-noh Othello

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抄録

本稿は, 平川祐弘作・宮城聰演出の『夢幻能オセロー』(2005年初演時のタイトル『ク・ナウカで夢幻能な「オセロー」』)における, 個人としての主体という近代的な人物観の超克という試みを, 言語と声の観点から検討するものである. シェイクスピア作『オセロー』を複式夢幻能へと翻案する本作の最終場面では, デズデモーナの幽霊として現れるシテが, オセローによるデズデモーナ殺害の場面を, 被害者と加害者の両者となって演じる. これまでこの場面は, 男と女, 白人と黒人といった二項対立の克服を表すものとして社会政治学的立場から解釈されてきた. しかし, ここで主体と客体の融合を可能にしている言語と声の様相とその作用という問題は看過されてきた. 平川の戯曲は, 主語の明示を必要としない日本語の言語的特性を利用し, 主体の揺らぎを孕んだ言葉において, デズデモーナをシテへと書き換えるものであり, さらに宮城演出のプロダクションは, そのようなシテの言葉が声として舞台上に身体化されるプロセスを上演するものである.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 28 105-117, 2019-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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