絶食時のジスチグミン臭化物内服を契機にコリン作動性クリーゼを発症した1 例

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タイトル別名
  • A case of cholinergic crisis caused by oral administration of distigmine bromide during fasting

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抄録

症例は98歳,女性.既往歴に左腎盂尿管移行部狭窄症があり,全身麻酔下での尿管ステン トの定期交換中であった.排尿障害に対しては4 年前からジスチグミン臭化物の内服中であ り,副作用なく経過していた.尿管ステント交換術目的に入院され,手術予定の12時間前か ら絶食, 5 時間前の絶飲食の上,ジスチグミン臭化物の内服を行った.内服4 時間後から, 嘔気,腹痛,下痢,唾液分泌過多を認め,血液検査でコリンエステラーゼ30U/I と低下がみ られ,コリン作動性クリーゼと診断した.直ちに硫酸アトロピン投与とジスチグミン臭化物 の内服を中止し,症状も改善した.ジスチグミン臭化物の添付文書には,イヌの動物実験で 絶食によりCmax が約9.4倍,AUC 0 -24が約6.6倍高値を示したとの記載がある.今回我々は 絶食時のジスチグミン臭化物投与により血中濃度が上昇し,コリン作動性クリーゼを発症し たと考えられた1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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