評価規約における収益費用観・資産負債観の意義 : 斎藤学説 (4)

書誌事項

タイトル別名
  • ヒョウカ キヤク ニ オケル シュウエキ ヒヨウカン・シサン フサイカン ノ イギ : サイトウ ガクセツ (4)
  • Hyōka kiyaku ni okeru shūeki hiyōkan shisan fusaikan no igi : Saitō gakusetsu (4)
  • Valuation rule and two conceptual views of earnings : case of Saito theory (4)

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抄録

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斎藤学説の評価規約は,事業資産・金融資産分類および配分・評価分類というふたつの分類のうえに構築されているが,前者 (事業資産・金融資産分類) の会計への導入可能性については,前2号 (『三田商学研究』第62巻第3号・第4号) において検討した。そこで,次に,配分・評価分類の成立可能性の問題を取上げることとしたい。 この配分・評価分類についても,検討すべき論点は多いが,ここでは,配分と評価との区分にかかわる問題 (満期保有目的有価証券 (割引債) の位置づけの問題),および配分と評価との関係にかかわる問題 (配分に対する評価の意義の問題) の2点を俎上に載せることとしたい。 まず第1の問題であるが,ここでは,現行会計実践における評価規約を端的に理解するために,製品・商品等,割引債,および売買目的有価証券の3項目に絞って検討することとしたい。この三者につき,斎藤学説の処理規約の考え方を纏めれば,次のようになるであろうか。すなわち,まず製品・商品等は,言うまでもなく,取得原価で評価され,それが各期に費用として配分されるので,配分資産に属するとされる。割引債については,周知のように,償却原価で評価される。もっとも,この償却原価には,定額法と利息法とがあるが,斎藤学説では,その両者は,どうやら,等価的代替的関係にあるようである。その場合,そのうちの定額法は,配分に属すると一般に認められているので,その定額法と等価的代替的関係にある利息法も,配分に属しているということなろう。 かくして,斎藤学説においては,償却原価一般が,配分に帰属することになる。その結果,一方,製品等の取得原価と割引債の償却原価とは,配分資産として括ることができるので,ここに,配分資産という概念が,形成される。他方,売買目的有価証券は,時価評価であり,その時価差額が損益となるので,配分資産とは根本的に異なる資産とみなされることになる。ここに,配分に対立する評価という独立のカテゴリーとしての評価資産という概念が形成されるに至るのである。そして,売買目的有価証券のみが,この評価資産のカテゴリーに帰属させられるのである。 しかし,こうした主張については,①割引債に関する定額法と利息法とは,本当に等価的代替的な関係にあるのかどうか (本当に配分として括れるのかどうか) ,②割引債の償却原価と製品・商品等の取得原価とが,本当に配分として括れるのかどうか,そして③割引債の償却原価と売買目的有価証券の時価とが,本当に配分と評価という対立関係にあるのかどうか,という3点が問われなければならない。 本稿は,この第1の問題につき,そのうちの①を検討することにしたい。結論的には,償却原価に関する定額法と利息法とは,けっして,等価的代替的関係にはないと筆者は考えている。計算対象の忠実な描写という視点からは,定額法は妥当ではなく,利息法のみが,定利獲得という損益産出事象を合理的に説明できる,というのが筆者の考えである。ここでは,そのことを,受取利息額の有意味性およびストック評価額の有意味性というふたつの視点から,明らかにすることとしたい。

論文

収録刊行物

  • 三田商学研究

    三田商学研究 62 (5), 29-56, 2019-12

    慶應義塾大学出版会

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